「死者と負傷者、そして第三の被害者」
今年の7月18日に発生した「京都アニメーション」の放火殺人事件で、殺人などの容疑で逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41)は、全身やけどで高度医療を受けるためにヘリコプターで大阪府内の病院に搬送され、10回に及ぶ皮膚移植などの治療を受けていましたが、車椅子に座れる程度に回復したため、11月14日に京都市内の元の病院に転院したと報じられました。そして、そのニュースの中で、この事件の被害者数について「死者36人、重軽傷者33人」と報じられました。
あたしは「死者34人、重軽傷者35人」で重軽傷者のほうが多かったと記憶していたのですが、調べてみたところ、現在までに重体だった患者2人が亡くなったということが分かりました。日本国内で起きた単独犯による事件としては、過去に例を見ない大惨事だと報じられました。
このような凶悪犯罪だけでなく、大規模な災害などの場合も、巻き込まれなかった人たちは、ついつい報道される「死者数」にばかり目が行ってしまいがちです。もちろん、亡くなられた方々が最大の犠牲者であることに間違いありませんが、何とか一命を取りとめることができた負傷者の中にも、とても辛い思いをしている人がたくさんいるのです。
たとえば、2005年4月25日に発生したJR福知山線の脱線事故では、死者107人(うち1人は運転士)、負傷者562人、JR発足後としては最悪の犠牲者を出してしまいました。JR発足後の事故では、死者42人を出した1991年の信楽高原鉄道列車衝突事故が過去最悪でしたので、それを2倍以上も上回る死者数ということで、どうしても「107人」という死者数ばかりが取り沙汰されてしまいます。事故以来、毎年4月25日に行なわれている慰霊式の様子を報じるニュースでも、たいていは「死者107人を出したJR福知山線脱線事故から●年」という枕詞で始まり、562人の負傷者にまで触れるケースは少ないのです。
でも、この562人の負傷者の中には、この事故によって人生を狂わされてしまった人が大勢いるのです。562人のうちの88人、これは、この事故によって腕や足を切断された人の数です。
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