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【Vol.302】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
▼「中曽根政権の5年間で、日本はスカスカ経済へと舵を切った」    (300号記念、空洞化の研究その3)  中曽根康弘氏が亡くなりましたが、世間にあふれている弔辞は、どれも退 屈なものばかりです。日米同盟は強固、国鉄改革は成功、経済が強かった時 代、韓国や中国とも蜜月、ということで、まるで聖人君子のような賛辞にあ ふれているのですから、呆れたものです。  私は、1982年から87年という中曽根政権の時代が、現在に至る日本 経済衰退の苦しみ、その元凶となる時代だと考えています。非常に大雑把で はありますが、駆け足でこの5年間を振り返ってみることにしましょう。  1982年は、CDフォーマット決定とIBMスパイ事件が起きた年でし た。  CDについては、ソニーが蘭フィリップスと共同で決めたとしていますが、 16ビットという低すぎるスペックのフォーマットが普及し過ぎてしまった ために、世界の音楽業界、オーディオ業界に計り知れないダメージ、つまり 付加価値を高められないという悲劇を招くこととなったのです。  そのダメージが一番大きかったのは日本であり、その後の30年間でゆっ くりと日本のオーディオ産業は安楽死していくのでした。iPodやMP3 といったデジタルオーディオを嫌って新しい波に乗れずに転落したというの は、最後のトドメに過ぎません。  一方で、IBMスパイ事件は、半導体技術などコンピュータのハード面で は、アメリカを抜きつつあった日本に対抗して、米IBMがソフトにおける 秘密主義によって互換機を妨害に出たところ、これに対抗した日本勢の情報 収集活動が悪質なおとり捜査の被害に遭ったという事件です。  だったら、日本勢は独自OSの開発に向かえば良かったのですが、アメリ カにそこまで汚い手を使われても尚、互換機にこだわったばかりか、ソフト 軽視の風潮をつづけたのは致命的でした。差し詰めITの世界における「ミ ッドウェイ敗戦」というところです。

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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