▼予想を越えて拡大する「Qアノン」現象
それでは早速今回のメインテーマを書く。予想を越えて拡大している「Qアノン」現象の政治運動化と暴力化、さらにはその他のアングラ系ネットコミュニティー全体の活性化についてである。
●「Qアノン」支持者の暴走
前回の記事に書いたように、すでに共和党下院予備選の候補者が「Qアノン」の支持を表明するところまで、「Qアノン」現象は拡大している。しかし、「Qアノン」の影響力の拡大はこれにとどまらない。暴力的な行動に出る人々が出てきた。彼らは狂信的といってもよいくらいの熱烈なトランプ支持者である。
2018年6月15日、ネバダ州のマシュー・フィリップ・ライトなる人物は、「Qアノン」が主張するFBIによるヒラリー・クリントンの極秘捜査のファイルの公開を求め、自動小銃で武装してトラックに立てこもり、90分間、フバー・ダムの交通を遮断する事件が起きた。
また今年に入ると、ニューヨークのマフィアのボス、フランク・コールが射殺される事件が起こった。犯人はニューヨークのアンソニー・コメロという人物であった。コメロと殺害されたコールとは面識も関係もなかった。コメロは、自分はトランプ大統領の特別な保護を受ていると信じ、フランク・コールがトランプに敵対していると信じたのが、殺害に及んだ動機だった。逮捕されたアンソニー・コメロは、右の手の平に書いた「Q」の文字を見せ、「Qアノン」の支持者であることを示した。
「Qアノン」は、すでにネットを枠をるかに越えた現象になっている。それはトランプを、アメリカを国民の手に取り戻す「アメリカ第2革命」の旗手と崇める政治運動の思想となりつつあるのだ。これは、最初はネットの掲示板の書き込みに過ぎなかったものが、トランプの岩盤支持層の過激な革命思想として一人歩きし、暴力も含めた具体的な行動を誘発するようになったのである。2020年は大統領選挙の年なので、「Qアノン」現象はさらに拡大を続けている。この動きが今後のアメリカの政治に一定程度の影響を与える可能性は大きいと思われる。
●FBIの報告書とテロの可能性
こうした状況に対して最大限の警告を発しているのがFBIである。2019年5月、アリゾナ州、フェニックスのFBI支局は、報告書で「Qアノン」の信奉者が国内テロを引き起こす可能性が高いとして、注意を喚起した。反政府的テロを引き起こすという。これは陰謀論が実際のテロを引き起こす原因として初めて認定されたケースになった。
報告書ではその根拠として、いくつかの検挙の事例を記載している。2018年12月19日、イリノイ州、スプリングフィールドにある教会をサタンの教会として爆破し、全米に「ニューワールド・オーダー」と「ペドフィリア」の存在を知らしめるために、爆弾テロを起こそうとした人物が逮捕されている。
また2019年8月には、「デジタル・ソルジャー・カンファレンス」の開催が発表された。これは、「デジタル市民革命」を実行する目的で集まった「Qアノン」主義者の集会であった。
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