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第93回 資産分割とブロックチェーン その1

ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン
▼今回の記事 …━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… 第93回 資産分割とブロックチェーン その1 …━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… 今回はブロックチェーンのシステムが実現する資産の分割と、セキュリティートークンについて紹介する。これは昨年あたりから注目されているブロックチェーン適用の新しい分野である。 ▼資産分割とブロックチェーン それでは早速メインテーマを書く。ブロックチェーンによる資産分割である。これは株式や債権のような新しい流動資産の形成方法として注目されている分野だ。2020年代にはこうした資産が一般的な投資対象になるとの観測が多い。いま、この分野のプロジェクトが多数立ち上がっている。 ●ICOとSTO これは、大きな資産の所有権を分割してブロックチェーンに登録し、販売するアイデアだ。その意味では、株式会社の分割された所有権を販売する株式と大きな違いはない。しかし、株式の対象が主に企業に限定されているのとは対象的に、ブロックチェーンによる資産分割の対象は企業には限定されない。アート作品、不動産、船舶、オフィスビルなど将来価値の上昇が期待できるあらゆる資産に及ぶ。 まず資産が細かく分割されると、それは「セキュリティー・トークン」として販売される。この販売による資金調達は「STO」と呼ばれる。これは「セキュリティー・トークン・オファリング」の略である。これは既存の「ICO」とは大きく異なるシステムだ。 ・「ICO」と「ユティリティー・トークン」 「ICO」とは「イニシャル・コイン・オファリング」の略で、「ユティリティー・トークン」を先行販売して新規プロジェクトのための資金調達を実施するものだ。「ユティリティー・トークン」とは、そのプロジェクトが提供するサービスで実際に使われるトークンのことである。 ブロックチェーンを活用するプロジェクトはあらゆる分野に及んでいるが、それらはシステが提供するサービスのやり取りに、独自のトークンを使用するものがほとんどだ。たとえば、プロジェクトの参加者が大きなネットワークをブロックチェーンで作り、お互いの空いた時間の労働を相互に提供するプロジェクトがあったとすると、そこで支払いに使われるのは、このプロジェクトに独自なトークンである。また、発展途上国の農家をブロックチェーンに登録し、そこから直接農産物を買うプロジェクがあったとすると、そのときの支払いに使われるのも、このプロジェクトに独自なトークンである。 このように「ユティリティー・トークン」とは、新規のブロックチェーンのプロジェクトでサービスのやり取りに使われる独自のトークンのことである。新規のプロジェクトの資金を調達するために、こうした独自のトークンは特典をつけて先行販売された。これを「ICO」という。 しかし、まだサービスの提供が始まっていないので、独自のトークンには価値の根拠になるようなものが存在しない。詐欺的なプロジェクトもあれば、将来大きくなるプロジェクトもあるが、「ICO」のうま味は、将来販売された独自トークンが一般の仮想通貨の取引所に上場すると、一時的にせよ価格が跳ね上がることにある。このタイミングを逃すことなく売り抜ければ、巨額の利益を獲得できることだ。どの国でも「ICO」の法的な規制が緩かったので、あらゆるプロジェクトの「ICO」が行われ、それが一部では投機を生んだ。 ・「STO」と「セキュリティー・トークン」 一方、「STO」とは「セキュリティー・トークン・オファリング」の略である。これは、ブロックチェーンに登録された分割資産を「セキュリティー・トークン」として販売するものである。先にも書いたように、資産としての実体的な価値があれば、分割対象となる資産はなんでもよい。そのため「ICO」による「ユティリティー・トークン」とは大きく異なり、実体的な資産の裏付けがあるのが特徴だ。この意味でいえば、「セキュリティー・トークン」は企業の所有権という裏付けがある証券に近い。 しかし、このような「セキュリティー・トークン」であるため、これを販売する「STO」にはどの国でも比較的に厳格な法的な規制がある。株式公開の「IPO」と同じような種類のものとして扱われているのが特徴だ。 「セキュリティー・トークン」と「STO」で分割される資産には対象の制限が実質的に存在しないので、あらゆる資産の流動化が進むことが期待されている。たとえば、価格があまりに高かったため流動性に制限があったアート作品でも、所有権を「STO」で分割できれば、アート作品そのものはディーラーで保管しておきながら、多くの投資家がこれを買うことができる。このようなことが可能になる「セキュリティー・トークン」と「STO」は、これまでの「ユティリティー・トークン」と「ICO」に代わるブロックチェーンの大きなトレンドになることが期待されている。 他方、「STO」には既存の法的な規制があるため、「セキュリティー・トークン」の一般の取引所における自由な販売が許されていない国々も多い。投機を抑制するためである。この結果、いまのところ「セキュリティー・トークン」は、「STO」を主催しているプロジェクトから直接購入するのが一般的である。

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  • ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン
  • 昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。
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