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【Vol.307】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「トランプ、イラン司令官殺害の目的とは?」  普通、要人を殺害するのは「暗殺」といって、秘密裏に実行して知らんぷ りをするものです。ですが、トランプはイラン革命防衛隊のナンバー2で、 防衛隊の中の「クドス部隊」のリーダーであったスレイマニ司令官について は、堂々と「殺した」という事実を公言してしまいました。それだけでも、 非常識極まる作戦と言わざるを得ません。  このニュース、発生した事象は「ドンパチやって憎いヤツをぶっ殺した」 ということで単純そのものに見えますが、政治的には非常に複雑な問題です。 仮説も含めて、現時点での論点を整理しておこうと思います。 1)今回のスレイマニ殺害については、彼の率いた「クドス」というのが、 イランによる中東全域におけるシーア派勢力の活動を操っていたとされ、米 国とイランの長い駆け引きが背景にあるのは事実です。そう考えると、スレ イマニという「大物」を殺したという大事件は、米国とイランの本格的な軍 事衝突になりかねないという見方も出てきます。  ですが、一方で、今回の事件は昨年末以来発生している、クドスによると 思われる駐イラク米国大使館などへのテロ攻撃とその報復という、小規模な 「攻撃と報復」の中で発生したという「短期的な事象」という見方も可能で す。  実は、そのどちらかというのは、評論する人間の価値観ではなく、当事者 がどう考えて、どう行動するかによって決まります。ということは、現在は ボールはイランが握っている中で、イランがどのような対応をするかで、事 態の評価も定まって来るのだと思います。 2)トランプ側の動機ですが、中心にあるのは原油価格の操作ということだ と思います。トランプの行動は、まるで「トラブルを拡大」したがっている かのように、それも「トラブルの泥沼化」を志向しているかのように見えま す。全く事態を収拾する気のない、誤った判断のように見えます。ですが、 見方を変えて、トランプは原油価格を上昇させるのが目的で、そのためには 「トラブルを欲して」いて、しかも「トラブルが継続」することを期待して いるとしたらどうでしょうか? そう考えると今回の行動は説明が可能にな ります。  トランプの原油価格政策ですが、少し変わったところがあります。ブッシ ュ以来の共和党は、エネルギー産業の利権を代表していることで、原油高を 狙って行動することが多かったのですが、トランプは必ずしもそうではあり ません。というのは、燃費の悪いピックアップトラックや巨大SUVの大好 きな支持者を中西部に抱えている中では、原油価格が上がりすぎるとマズい からです。  ただ、この年初の局面では、少し上げておこうという要素はあったのかも しれません。また、盟友のサウジや、裏でつながっているロシアなどに「エ ールを送る」ためにも原油高政策になるこの種のトラブルを計画的に発生さ せる動機は十分にあります。(以下略)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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