利下げを封印された黒田日銀
「“躊躇なく”の形骸化」
黒田日銀総裁は1月15日の日銀支店長会議で挨拶し、「海外経済を中心に、経済・物価の下振れリスクが大きい中で、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、躊躇なく追加的な金融緩和策を講じる」と述べました。その一方で、現在の国内景気は「緩やかな拡大をしていて、今後についても緩やかに拡大する」とも言っています。
つまり、日銀としては必要ならいつでも追加緩和の用意があるが、幸い、現在の日本経済は緩やかながら拡大を続け、今後も拡大が続くと予想されるので、物価安定へのモメンタムが損なわれる恐れは当面ない。だから追加緩和策の必要もない、と言っていることになります。
この「躊躇なく対応」との表現は昨年秋以降、言い続けられています。そして、秋以降の日本経済は、海外の状況はともかく、国内要因として消費税の引き上げ、相次ぐ台風の被害が重なって、これまでよりも一層景気の悪化が顕著になっています。自然体で見れば、マクロの需給ギャップが悪化し、物価上昇へのモメンタムは損なわれる恐れが高まっていると見られるのですが、日銀に動く気配が見られません。
今や、黒田総裁の「躊躇なく対応」との表現は、「何もしない」ことの言い換えとさえ見られ、形骸化しています。安倍総理まで、国民に信を問う状況となれば「躊躇なく」解散に踏み切る、との表現を使い、周囲からは「解散はできない」という意味だ、との解説が聞かれました。
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