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【Vol.309】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「広島の選挙スキャンダルとポスト安倍問題」 まず大前提としては、「悪人である案里候補が、悪い選挙違反をやった」 ので、「その夫の克行議員も含めて悪い」だから、この2人を抹殺すればい いという話では「ない」ということです。  1点目は政治的な背景です。問題は、2019年7月の参院選に戻ります。  この参院選で案里議員は初当選したのですが、その選挙の構図がよく分か る記事が、まだ残っています。例えば、公示前の2019年5月12日の産 経新聞(電子版)には次のような解説が出ています。 「夏の参院選の広島選挙区(定数4=改選数2)をめぐり、自民党内 で亀裂 が深まっている。現職の溝手顕正氏(76)と新人の河井案里氏(45)の 2人による票の奪い合いとなるためだ。広島は溝手氏を含め岸田文雄政調会 長率いる岸田派(宏池会)国会議員6人(当時)を抱える「宏池会王国」。 河井氏は菅義偉官房長官らとの近さを演出し、岸田、菅両氏の代理戦争の様 相も呈している。」  というのです。同じ記事では、この「代理戦争」について 「「一票たりとも回すな」。溝手氏は周囲にこう訴え、陣営の引き締めを図 っている。」  とか、 「岸田氏は、2人目の擁立は受け入れたものの、周囲には「おれは宏池会会 長だ」と語り、河井氏の支援には消極的だ。」 「「溝手陣営にいじめられている」。河井陣営はこう強調し、独自の人脈を 使って活路を見いだす構えだ。」  などという刺激的な描写がされています。もっと恐ろしいのは、同じ記事 ですが、 「党広島県連HPに溝手氏のHPを表示するバナーはあるが河井氏はない。」 「県連は3月に支援を溝手氏に一本化することを決めた。」 「河井氏が県内の団体を訪れても門前払いされるケースがあるという。」  などということが書いてあります。ところで、選挙のウグイス嬢というの は(それ自体が、選挙制度のバカバカしさとセクシズムの感じられるイヤな カルチャーですが)特殊技能であって、素人には難しいのだそうです。  そうなると、今回の事件についての見方は変わって来ます。つまり、3つ の可能性が考えられます。 1)そもそも数の限られている広島県内のウグイス嬢について、県連や溝手 陣営が「河井陣営では働くな」という圧力をかけて、河井氏が困るような 「イジメ」をやっていた可能性。 2)そこで追い詰められた河井陣営が「全国的にプロがやっている脱法行 為」だという認識で「仕方なく領収証を工作する形で倍額払って」ウグイス 嬢を集めたが、そのウグイス嬢が県連とつながっていて、河井を陥れるため に密告をしていた可能性。もしくは、最初から溝手陣営などのスパイだった 可能性。 3)その場合に最初からウグイス嬢を抑えていた溝手陣営では「1万5千 円」では、金銭的なメリットが提供できないので、「絶対にバレない高度な 工作をした上」で「もっと上のメリットを提供していた」という可能性。  この3つの可能性が考えられます。更にその上には「そもそもウグイス嬢 の派遣などは、県内の有力者が一手に握っていて、もっと別の世界とつなが っている」とか、色々な「闇」が関係しているということも、可能性として はあるのかもしれません。  いずれにしても、状況証拠的には今回の事件は、「河井」対「溝手」とい う、「菅」対「岸田」の代理戦争がヒートアップした結果起きた事件であり、 では、どっちがクリーンなのかというと、簡単には言えないダーティなもの だということは言えると思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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