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高野孟のTHE JOURNAL Vol.431 2020.2.3 ※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1032》
忍び寄る「サイバー・ファシズム」の恐怖/その1
―BBC放映の映画『ブレグジット』を観る
【2】《CONFAB No.431》
閑中忙話(1月26日~2月1日)
【3】《FLASH No.336》
都合のいい数字だけ列挙して現実を見ない「アベノチャット」
――日刊ゲンダイ1月30日付「永田町の裏を読む」から転載
【4】《FLASH No.337》
憲法第9条は「政治的マニフェスト」
――9条連ニュース1月号「高野孟の政治展望台」から転載
【5】《SHASIN No.383》付属写真館
■■INSIDER No.1032 2019/02/03 ■■■■■■■■■■■■■■■■
忍び寄る「サイバー・ファシズム」の恐怖/その1
――BBC放映の映画『ブレグジット』を観る
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英国が、1月31日23時(日本時間1日午前8時)、正式にEUを離脱し
た。これから同国が直面するであろうありとあらゆる困難については、
多くの解説が行われているので、ここではいちいち取り上げるのはやめ
にしよう。私が最も懸念するのは、16年6月の国民投票での世界はもち
ろん英国人でさえ「まさか」と驚いた離脱派の勝利は、「離脱さえすれ
ばすぐにでも生活がよくなる」かのデマゴギーの上に成り立ったもの
で、早晩その嘘がバレて激しい反動が起き、この国が大混乱に陥るので
はないか、ということである。
●毎週470億円をEUに捧げている?
離脱派のキャンペーン団体「ヴォート・リーブ(離脱に投票を)」の
中心スローガンはWe send the EU £350 million a week, let’s
fund our NHS instead(我々はEUに毎週3億5000万ポンド〔=470億
円〕を差し出している、その分を我々の国民保険サービスに投入しよ
う)というものだった〔写真
http://bit.ly/395Lu1N 〕。
離脱派は当初、主として旧東欧からの移民の急増への不安を煽り、
「ブルガリアで月収5万円の貧民がロンドンの街で物乞いをやれば1日
10万円も稼げることも可能だ」「EUから離脱する以外にこれを防ぐ手段
はない」などと言い触らしてきた。移民が増えているのは事実だが、厳
密に言うとこれは「人の移動の自由」を定めた「シェンゲン協定」の問
題。これにはEU加盟国のうちの20カ国と非EUのアイスランド、ノルウェ
ー、スイス、リヒテンシュタインの4カ国とが正規加盟しているが、英
国とアイルランドはEU加盟国でありながら同協定の一部にのみ参加して
いるだけで、ビザ発行と国境検査の廃止には合意していない。従って、
移民が押し寄せるのはEUのせいだというのはシンプル過ぎる主張であ
る。またブルガリアはEUには加盟したがシェンゲン協定には未加盟であ
り、EUもしくはシェンゲン協定のために英国にブルガリア移民が増えて
いるという事実はない。
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