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【Vol.314】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「問題は、自分より優秀な人材を管理できない、指導できない人物」  クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で発生していた不十分な防疫体 制の問題は、現時点でも厚生労働省は 1)主要な感染は2月5日以前のもの 2)2月19日以降の日本国内へ向けた下船方法に誤りはなかった 3)船内で業務にあたっていた厚労省職員と医師への検査は不要  という立場を変えていません。つまり、岩田健太郎医師が動画で指摘し、 これに対して「正しいことが通らない」と「やんわりと諭(さと)した」高 山医師のメッセージも拡散した中で、2月5日以降の船内での感染の可能性 について世界的に懸念が生じている中で、依然として厚労省としては、それ は「なかった」という強弁を貫こうとしているわけです。  例えば、23日から24日の報道では米国国務省からは「船内隔離14日 を満たす2月19日を待たずに、17日にチャーター機で米国人を帰国させ たのは、日本政府の負荷を軽減するため」という意味不明のメッセージがあ るとかないとかいう報道がありましたが、これも奇妙です。米国政府に対し て、「5日以降の感染が怖いので急遽引き取った」ということを「言わない でくれ」という根回しがあり、米国サイドが「日本に貸しを作る」形で、そ のようなメッセージをリークするのに同意した可能性が感じられるからです。  ちなみに、外交の常識からすれば、そのように他国に「弱みを見せて貸し を作る」というのは国益を毀損する可能性があり、ご法度であることは言う までもありません。  どうして、こんな不自然なことになっているのでしょう。少なくとも厚労 省官僚の感染が3名、内閣官房の職員の感染が1名出ている(2月24日時 点)わけですから、5日以降の防疫体制に問題があったのは明らかなのです が、どうして認めようとしないのでしょうか。また、それ以前の問題として、 どうして岩田医師の助言は「無視された」り、「ムカついた」りされたので しょう?  1つには、官僚組織の悲しさということはあるでしょう。前例主義と形式 主義に汚染されて、細かいことまで文書で指示するという「ビューロクラシ ー(官僚主義)」にがんじがらめに縛られてしまって、過ちを訂正出来ない ということがあると思います。  それとは別に、責任者クラスの人が「スキル不足」という可能性、特に 「感染症対策の専門スキルがない」だけでなく、「一般的な管理スキルもな い」という状態だということが推察されます。  この「一般的な管理スキル」ですが、こうした危機において重要なのは次 の5つだと思います。 1)情報流通を迅速に行う。 2)ネガティブ情報を歓迎する。 3)方針に誤りがあれば直ちに訂正する。 4)見通しに幅があれば、世論に対して、より厳しいケースを覚悟させる。 5)自分より有能な部下に気持ちよく仕事をさせる。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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