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【Vol.315】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「全国小中高一斉休校、問題を抱えたギャンブルか?」  それにしても唐突でした。改めて振り返ってみると、 2月25日(火)・・・基本方針発表、重症者増加回避策を最優先 2月26日(水)・・・基本方針に追加してイベント自粛要請 2月27日(木)・・・全国一斉休校方針発表 2月29日(土)・・・総理会見  という順序だったわけですが、いかにも急な判断であったという印象です。 イベント全面自粛や全国一斉休校というのが、予め決定されていたら、25 日の基本方針と一緒にまとめて発表すればよかったわけですが、日に日に厳 しくなる情勢判断のもとでは仕方なかったのかもしれません。  良かったのは、この4つの発表には矛盾がないことで、1つの一貫したス トーリーにはなっていることです。仮に、この4つの発表に矛盾点があるよ うですと、社会は大混乱に陥った可能性があり、少なくともそれだけは回避 されたのは良かったと思います。  矛盾がない一貫したストーリーというのは、以下のような考え方です。 ・市中感染は全国で相当に拡大していると見ている。 ・また、若年層においては感染しても軽症でインフルと見分けがつかないか、 無発症のケースも相当に出ているであろう。 ・市中感染が拡大し、その多くが無発症のケースだとすれば、これを放置す ればどんどん拡大する。この点についてはSARSよりも、インフルよりも 厳しい条件だと考えられる。 ・その結果として、重症者が増加して医療機関が対応できなくなり、救命で きる重症事例が救命できないケース、これが最悪シナリオであり、このシナ リオを避けるのが国策の最優先事項である。  この点に関しては、少なくとも2月25日以降の政府は「ブレて」はいま せん。例えば、加藤勝信大臣は、この25日の時点で「先手先手」というこ とを言っていました。この点に関して言えば、例えば春節時における膨大な 入国許可とか、「ダイヤモンド・プリンセス」での防疫といった点に関して は「後手」であり、弁明の余地はありません。  ですから、この25日の「先手先手」という加藤発言は批判を浴びたわけ ですが、この発言に限って言えば、加藤大臣は「後手に回った過去の失態」 を否定したり、ウヤムヤにしようとしたわけではないと思います。「医療機 関の受け入れ体制が崩壊して、救命できるケースの救命ができない」という 最悪シナリオに対しては、「まだ間に合うので先手を打っていく」という趣 旨での発言であり、この点に関しては理解できますし、29日の総理会見に 至る一連の施策との整合性もあると思います。  そこまでは良いことにしましょう。と言いますか、これは決定された国策 であるばかりか、極めて大人数の生死のかかった判断であり、その対策の効 果が見えないうちから否定したり妨害するべきものではないと思います。  問題は次の2点です。 (1)子供は重症化しないという報告がある一方で、子供は無発症のまま感 染を拡大させる可能性があり、高齢者や基礎疾患を持つ成人に感染させて重 症患者を発生させるのを抑止するために、学校の一斉休校は有効と考えられ ます。  ところが、そのような説明は「結果を得られない」可能性があるため「子 供の命と健康を守る」という説明に「言い換え」をしています。その判断が 吉と出るか、凶と出るかはギャンブル性が高いと思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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