■畳み人の仕事術
実際にはできそうにないことを言ったり、計画したりすることを、
「大風呂敷を広げる」という。ビジネスの世界で突飛なアイデアや
大風呂敷を広げる経営者やリーダーはいわば「風呂敷・広げ人」だ。
そんな突飛なアイデアを、実現可能な状態まで設計し、着実に実行
に移す人は「風呂敷・畳み人」だ。大風呂敷を広げたようなアイデ
アをきちんと形にたためる人というたとえからくる造語だ。
彼らは、リーダーに対する「名参謀」や「右腕」のような存在だ。
時にはチームの先導役として、時にはいちプレイヤーとして変幻自
在に活躍する。
具体的には、社長などの広げ人の近くで一緒にアイデアを組み立て、
実行する戦略を練り、チームを組成し育て、社内外の根回しもして、
その事業全体を牽引し成功に導くのが畳み人の役割だ。
広げ人がアイデアをゼロから生み出す「0→1の人」なら、畳み人
は、1を10にも100にもする仕事だ。アイデアは実行されてこそ意
味がある。そこに「畳み人」の「畳む技術」が重要なのだ。
真価が問われるのは「アイデアや戦略をいかに実現するか」だ。や
りたい仕事ができるようになるための最良のルートは、この畳み人
のスキル、いわば畳む技術を身につけることなのだ。
★
畳み人は、広げ人のアイデアを「はじめは」一緒に面白がることだ。
これが「風呂敷・畳み人」にとって、非常に大切なファースト・ア
クションといえる。
素晴らしいアイデアを生み出した広げ人は、何より「共感者」を求
めている。だから畳み人はリスクを感じても、そのリスクと同等か、
それを上回る可能性を感じたなら面白がることだ。
広げ人と一緒に面白がる際のポイントは「はじめは」という部分だ。
畳み人自らが、実行の際にポジションを取り、アイデアを軌道修正
や中止できるようにするために不可欠なアクションだ。
アイデアを出した人は、反対する人の意見にも耳を傾けるが、素直
に言うことを聞かない場合も多い。だが、最初に「面白い」と共感
し、本質を見ようとする人のアドバイスなら検討してくれるものだ。
★
広げ人は、出したアイデアや方針をすぐに変えがちだ。過去のアイ
デアに縛られず、面白いほどどんどんアイデアの形を変えていく傾
向があるのだ。
広げ人の視点は、組織の内よりも外、未来に向けられている。そし
て世の中は常に動いている。だから、ある時「いい」と思ったアイ
デアや戦略も、数日の間に古いものになることがある。
大切なことは、一度出した考えを曲げないことではない。そのアイ
デアを世の中に合わせて軌道修正ながら、成功できる確率を高める
ことだ。
変更すればメンバーの準備は無駄になる。だが、それは、市場や顧
客には関係ない。メンバーにとって楽しい話ではない。だから「広
げ人は朝令暮改をするから仕方ない」と思い込んでしまうことだ。
★
広げ人には、色々なタイプの人がいる。あらゆるタイプの広げ人に
対応するために大切なことは、広げ人のことを世界一理解しようと
努めることだ。そのために必要なことは、とにかく観察することだ。
広げ人の言葉に丁寧に耳を傾け、その言葉を深く理解しようと心が
ける。さらに、なぜそんな発言をするのか、どういう考えか、その
時の心理状況はどんな状態かを全身全霊で想像する。
言葉に限らず、行動も含め、広げ人の全てのアクションとその思い
の裏側に想像力を働かせることだ。一緒に働き始めて間もない頃で
あればあるほど、特にこの意識が大切だ。
畳み人は、広げ人の最も近くでコミュニケーションを取っていくこ
とだ。プロジェクトを実行するためにも、広げ人について世界一理
解して詳しくなることが必要なのだ。
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