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【Vol.317】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
<問題提起「コロナ対策、3つの論点」>  現時点では緊急で、次の3つの論点について議論をしなくてはならないと 思います。これまで読者の皆さまとの対話を通じてお話申し上げて来た内容 を含みますが、改めて3つに整理したいと思います。 1つ目は、検査数の問題です。  これまで日本とアメリカは検査を絞ってきました。これには様々な理由が あります。 ・検査のために医療機関に希望者が殺到すると医療体制を潰す。 ・検査のために人々が殺到すると、そこで感染リスクが高まる。 ・検査の誤差を無視して、社会的過剰反応が起きるのはマズい。 ・無症状、軽症者も含めて感染者を暴き出すことは社会的に副作用が大きい。 ・初期の防疫目的の検査を通常の医療システムに移管するのが大変。  ということで、合理的な理由はあるわけです。ですが、アメリカは大量の 検査を行う方針に転換しつつあります。一方で、韓国は大量に検査を行って 成功したとされます。  改めて、日本はこの問題について方針転換をするのか、しないのか議論の タイミングが来ていると思います。 2番目は、このメルマガでも論争をさせていただいた問題です。つまり、 ・感染しても若年層は無症状が多く、発症しても軽症で重症化しない。 ・一方で高齢者、基礎疾患のある人は重症化して死に至る場合もある。  という前提のもとで、 ・高齢者の外出禁止をするか? それとも若年層の活動停止をするか? ・若年層の活動停止に誘導するとして、理由をどう説明するのか?  という問題があるわけです。この点に関して、安倍政権は、 ・高齢者の外出禁止措置はしない。 ・全国の小中高を一斉休校する。 ・理由は感染拡大防止による重症化リスク集団の保護とはせず、あくまで子 どもの健康というストーリーで押し通す。  という姿勢で一貫して来たわけです。繰り返しになりますが、この措置は それはそれで筋としては通るという考え方が成立します。 ・子どもには自分たちの健康のためという説明が効果的。 ・親の子の健康を気にする心情を利用するのも効果的。 ・人口的に巨大な集団である高齢者を納得させるのは大変。  というのは、理念的には正しくないですが、行政の実効性、つまり生と死 を分ける問題ということを考えると、成立するのかもしれないというのが今 回の議論でした。  ですが、良く分からないのですが、そのように裏表のあるストーリーが、 行政あるいは政権中枢において共有されているのかどうかが、怪しくなって 来ています。  どうも日本では、この週末ぐらいから「楽観ムード」に加えて「経済が持 たない」というムードも重なって、自粛解除、休校解除が「なし崩し的」に 始まる気配です。  仮に解除が進んでしまって、結果的にそれが失敗に終わるのであれば、多 くの方が指摘されたように「高齢者などハイリスク層を守るため」と正直に 言ってやったほうが良かったということになります。この点に関してはアメ リカでは大統領自身が正直に言っていますが、日本の場合、吉と出るのか凶 と出るのか、これからの数週間が非常にクリティカルです。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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