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高野孟のTHE JOURNAL Vol.439 2020.3.30 ※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1040》
1年延期でますます開催意義が問われる五輪
――「全世界こども運動会」に切り替えたらどうか
【2】《CONFAB No.439》
閑中忙話(3月22日~28日)
【3】《FLASH No.346》
永田町に流れる「5月減税解散で政権延命」という噂の真相
――日刊ゲンダイ3月26日付「永田町の裏を読む」から転載
■■INSIDER No.1040 2020/03/30 ■■■■■■■■■■■■■■■■
1年延期でますます開催意義が問われる五輪
――「全世界こども運動会」に切り替えたらどうか
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安倍晋三首相は3月24日、IOC のバッハ会長と電話会談し、東京五輪
を「おおむね1年程度延期することを検討してもらいたいと」と提案、
「100 %同意する」との返答を得た。その後に安倍は記者会見し「人類
が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして完全な形で東京大
会を開催する」と説明した。
しかしこの構図は著しく歪んでいて、そもそもなぜここに安倍がしゃ
しゃり出てくるのか分からない。五輪の開催・延期・中止を判断し決定
する権限を持つのはIOC であって、彼らが通告ないし提案してきて日本
側がそれに同意するのが筋である。しかも彼らがそれを言うべき相手は
組織委員会の森喜朗会長であって安倍であるはずがない。組織委員会こ
そが、日本五輪委と東京都とで作った東京五輪の責任ある実施主体であ
って、安倍はその顧問会議議長ではあるけれども、森を差し置いてバッ
ハとやりとりする立場にはない。
●ずる賢いバッハの逡巡
バッハが「自分からそれを言い出すのをできるだけ避けているように
見えた」理由について、スポーツ社会学の坂上康博=一橋大学教授は、
テレビ局やスポンサーに大きな損害を与えてしまうこと、IOC が開催地
に負担を強いているという印象を強めることを恐れていたからだと指摘
している(3月26日付朝日)。
IOC の2013~16年の収入は約57億ドル(約6300億円)で、その7割強
がテレビの放映権料。かつてはそのまた7割以上を米国のテレビ局が占
めていて、彼らの意向で開催時期は米国内のスポーツ競技の閑散期に当
たる夏で、さらに人気のある競技は米国のゴールデンタイムに生中継で
きるようゲーム開始時間が組まれるということが罷り通っていた。今で
は、米テレビ局のシェアはそれほどでもなく、放映権料全体の中で5割
程度と見られているが、それでもIOC としては放映権料を少しでも高く
売るのに命懸けなので、出来れば自分から延期や中止を口にしてテレビ
局やスポンサー企業の機嫌を損ねることはしたくない。
また開催地の経済負担の大きさという問題は、すでに五輪そのものの
存続に関わるほどに深刻さを増している。無理を重ねて誘致して施設の
整備や大会の準備に莫大な費用を注ぎ込んでも、大会後にはその国の経
済全体が落ち込み、せっかくの施設も市民スポーツの増進には役立たず
に廃墟化するなど、マイナス面ばかりが目立つようになった。そのため
招致の手を挙げるのはロンドン、東京、パリなど先進国の巨大都市ばか
りになり、他の都市で市長が動こうとすると市民から反対運動が起きる
ような始末である。
つまり五輪そのものがもはや黄昏のビジネスとなりつつあって、そこ
で今回「中止」となれば破局は間違いなし。「延期」であっても恐らく
何千億円もの追加費用を投じて無理に無理を重ねて強行しなければなら
ないはずで、それを見ればますます誘致希望者はいなくなっていく。そ
れを思うと、バッハはたぶん、自分の方からは「さらに何千億円かけて
でも延期せよ」とは言い出せなかったのだろう。
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