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高野孟のTHE JOURNAL Vol.440 2020.4.6 ※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1041》
米国でも物笑いの種となった「アベノマスク」
――コロナ禍対応で問われる指導者像、そして国家像
【2】《CONFAB No.440》
閑中忙話(3月29日~4月4日)
【3】《FLASH No.347》
会見でいい加減なことを口走る首相を記者はたしなめないのか
――日刊ゲンダイ4月1日付「永田町の裏を読む」から転載
【4】《SHASIN No.390》付属写真館
■■INSIDER No.1041 2020/04/06 ■■■■■■■■■■■■■■■■
米国でも物笑いの種となった「アベノマスク」
――コロナ禍対応で問われる指導者像、そして国家像
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今井尚哉補佐官が脚本・演出を担当し、安倍晋三首相が主役を演じる
「やってるフリ」芝居は、4月1日の「アベノマスク」宣言に至って、
ついに国内ばかりでなく米国の複数のメディアからも揶揄されるほどの
物笑いの種となってしまった。
●なぜ突然に「布製マスク」なのか?
一般に家庭用として売られている使い捨ての不織布マスクは、業界用
語ではサージカル・マスクと呼ばれている。「外科用のマスクという意
味で、本来、手術の時などに医師の口から唾液や雑菌などが患者の手術
部位に付着しないように開発されたマスクを指します。ウイルスなどの
『吸入』を防ぐためのものではありません」(スリーエム社HPの解説:
https://bit.ly/2UI1um2 )。
これに対して、プロ仕様のマスクとしてはN95防護マスク、DS2防塵マ
スクがあり、これらは「マスクを正しく装着し、顔にフィットさせれ
ば、PM2.5 、ウイルス、射性粉じんの吸入リスクを低減する目的には有
効」「N95は米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が定めた規格、DS2は日
本の厚生労働省が定めた規格で、両者はほぼ同等」(同上、写真参照
https://bit.ly/2JKR1zS )。N95とは粒子捕集効率95%以上という意味
である。
かつて北京のPM2.5 大気汚染が激しかった時には現地の日本大使館が
N95 の装着を推奨していたものだが、今はその仕様のものは感染症に立
ち向かう医療関係者に集中しなければならない時で、我々は一般の不織
布マスクで我慢しなければならない。しかしそれは、自分が感染してい
る場合に他人に移すのを防ぐこと、ウイルスに触れた手で自分の口や鼻
に触るのを防ぐことに一定の効果が期待されるという以上のものではな
い。布製マスクも同様だが、布の編み目は不織布よりも遙かに粗いの
で、その効果は相当低くなる。
そもそも安倍は3月5日に3月中にマスク6億枚以上を供給できると
表明したが、その公約が一体どうなったのかをきちんと国民に説明しな
ければならない。増産が思ったようにうまく行かなかったのか、増産は
したけれど大元のところで買い占めている者がいたのか、それとも流通
体系にネックがあって店頭になかなか出回らないのか、実状を明らかに
して対策を示す必要がある。そして、それが奏功して不織布マスクが十
分に出回るようになるのは(例えば)4月下旬になる見通しなので、そ
れまでの繋ぎとして、性能的にはやや落ちるけれども布製マスクを全戸
配布させて貰います――というのなら、まだ話は分かる。
しかし実際はそのような丁寧な検討の結果ではなく、今井が「全国民
に布マスクを配るというサプライズを打てば、国民の不安なんかパッと
消えますよ」と進言して、安倍が盲従しただけのようである。国民をバ
カだと思っているこの2人だからこそ出来る、愚劣極まりないパフォー
マンスである。
●「アビガン」キャンペーンは大丈夫か?
もう1つの悪質な「やってるフリ」芝居は、新型コロナウイルスへの
治療薬が今にも出来るかのようなキャンペーンで、これには特に読売新
聞が前のめりになって旗振り役を買って出ている。
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