■運を加速させるには?
人種も性別も関係なく、とにかく強いプレーヤーが勝つ。それが、
バックギャモンの世界だ。ただし、囲碁や将棋と異なり、最善を尽
くしても、どうにもならない要素が勝敗を大きく左右する。
それは、競技で使う2つのサイコロが関係している。どんなに強い
プレーヤーであっても、サイコロの出目を操ることはできない。運
を天に任せて、2つのサイコロを振るしかない。
つまり、才能や努力ではどうにもならない不確定要素である「運」
という領域が勝敗を左右するゲームなのだ。だが、それは偶然に身
をゆだねることではない。運とは、自分で創るものなのだ。
★
バックギャモンでは、プロも初心者も、サイコロという確率の世界
では平等だ。しかし、両者が戦うと、プロが数々の幸運に恵まれて
毎回勝ってしまうように見える。
それは、プロがどんな目が出てもいいように準備しているからだ。
強いプレーヤーは、どんな目が出ても対応できるように駒を配置す
る。先々の局面で自分が有利になるように考えて駒を動かすのだ。
逆に、弱いプレーヤーほど、先々の可能性を自ら狭める手を打つ。
彼らは現在の局面を良くすることで手一杯で、先々への目配りがで
きていないのだ。
私たちは、自分に望ましいことが起きると「運がいい」と感じる。
であれば、できるかぎり自分に「望ましい」と思える状況を作りだ
せばいいのだ。
そのためには、先々の展開を想定しておくことだ。そして、できる
だけ自分が有利になる可能性を広げておくのだ。そうした準備さえ
できていれば「ツイてないな」と嘆く可能性が減るのだ。
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テレビで野球やサッカーの試合を見ていると、実況や解説の中で「流
れ」という言葉がよく出てくる。だが、勝利の女神が、どちらか一
方から運を移し替えるようなことはない。
突然起きた思いがけない出来事も、実は小さな積み重ねだ。流れの
ように感じられても、それは自分が作り出した幻想だ。流れで片づ
けているうちは目の前の運に気づかず、運をつかむことはできない。
自分にとって望ましくない展開が続いたら、やるべきことは自分が
打ってきた手が本当に最善手だったかを冷静に検証することだ。そ
して、どこかの段階で判断ミスを修正することだ。
検証してもミスが見つからなかったら、そのまま最善手を打ち続け
る努力をするべきだ。自分には何の落ち度もないのに、事態がよく
ない方向へ向かうことはあるものだ。
そういう時は、慌てず辛抱して、とにかくベストを尽くすことだ。
「流れが悪い」と思い込んで、気持ちが沈んだり、事態を打開しよ
うとして無理をすると、ますます敗色が濃くなるだけだ。
★
幸運の女神には前髪しかないという。チャンスをつかむ人と逃す人
の差は、チャンスの到来に気づく「感度」と、俊敏な「行動力」だ。
さらに、それらに「準備」もつけ加えたいところだ。
バックギャモンには「バックゲーム」という戦略がある。バックギ
ャモンは、駒を先にゴールさせたほうが勝つゲームなので、ゴール
までの距離が進んでいるほうが有利だ。
だが、距離で大きく遅れている場合は、あえて前に進まず、敵陣で
相手の駒を振り出しに戻すチャンスを待つことだ。これがバックゲ
ームだ。距離で大きく遅れている側にとり、唯一の逆転チャンスだ。
この時大事なことは、ただチャンスを持つだけでは逆転できないと
いうことだ。チャンスが来た時に勝てるように、自陣に最強の陣を
作りながら勝つための準備をするのだ。
準備だけ整えて、あとはチャンスの瞬間を持つことができる人が強
い人だ。努力が必ず報われるとは限らない。だが、努力なしには何
も得られない。チャンスをつかむ人とは、そういう人のことだ。
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