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週刊 Life is Beautiful 2020年4月21日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん スピンドル事件 質問コーナーに、 「GACKTのスピンドルの件」 について、一体どのような件だったのか、そしてなぜ誰もそのことについて言及しないのか、またなぜ悪い事をしている(はず)のにいまだに日本のテレビでよく見かけるのか、非常に気になります。 という質問が届いたので、今回は丁寧に解説したいと思います。 スピンドル(SPINDLE)は2017年に発行された暗号通貨の一つです。当時は、暗号通貨の代表格であるビットコインの価格が高騰していたこともあり、多くのベンチャー企業が「安易な資金調達方法」として独自の暗号通貨を発行する「詐欺まがい」の行為が横行していました。 「詐欺」ではなく「詐欺まがい」なのは、その頃は法律が追いついていないどころか、金融庁や消費者庁の人たちが暗号通貨とは何かを理解してすらいなかったため、法律や役所が一般消費者を守ることが出来ずに、ある意味「騙し放題」でした。 ベンチャー企業に限らず、企業による運営資金調達方法は、一般的に、株式の発行(投資)、もしくは借金(融資)により行われます。どちらの場合にも、しっかりとした法律があり、投資・融資をした人たちがしっかりと守られる仕組みが出来ています。 暗号通貨の発行はICO(ICO、Initial Coin Offering)と呼ばれますが、暗号通貨を発行する企業は、「暗号通貨は、株でも借金でもないから、どちらの法律も適用できない」という姿勢で、既存の法律に全く規制されない形で、暗号通貨を資金調達の手段として使い始めました。 当然ですが、プロの投資家たち(ベンチャー・キャピタリストと呼ばれる人たち)はこんな如何わしいものには手を出しませんでしたが、そこでカモにされたのが、経済の仕組みに詳しくない一般消費者です。 ビットコインだけでなく、その後に発行されたイーサリアムなども高騰し、それによって「億り人」と呼ばれる暗号通貨長者が誕生しているのを羨ましそうに見ていた消費者にとって、「取引所に上場する前の暗号通貨を手に入れること」は、一攫千金のチャンスに思えたのだと思います。 その中で、特に悪質だったのが、ガクトを広告塔として担ぎ上げて220億円ものお金を集めたスピンドルでした。 スピンドルの発行元はブラックスターという会社で、発起人は宇田修一という人で、過去にも行政処分を受けた問題のある人物です。ガクトがなぜこんな如何わしいプロジェクトに参加したのかは不明です(ネットには「ガクトが宇田修一から多額の借金をしていたため」という情報が流れていますが、憶測にしか過ぎないようです)。 ガクトはその知名度を使い、スピンドルを宣伝しただけでなく、ファンを集めた投資セミナーで以下のような言葉でファンを煽ったそうです。 そのスピンドルについて、新たな問題が浮上した。28日発売の「週刊文春」(文藝春秋)によれば、ブラックスターは「(スピンドルを)他人に譲渡することを原則禁止しており、2号仮想通貨ではないため(無登録でも)国内販売できる」という旨の意見書を公開しているが、17年に行われた商談会で、GACKTは参加者たちに対して「ちょっと今までとは考えられない儲け方なので」「1000万円を入れたのが2億とかなっているんですよ」などと語り、出資を迫っていたという。(GACKT、仮想通貨スピンドル出資勧誘で「詐欺罪」成立の可能性も…多額損失者が発生か) 私から言えばこれは、法律が整備される前の「出資詐欺」と全く同じ手口であり、現行法を適用しても十分に犯罪行為として立証できるし、さらなる法律改正により、この手の事件が二度と起きないように厳密に取り締まるべき重大な詐欺事件です。 これほど重大な詐欺事件でありながら、ガクトが逮捕もされないことに関しては、私も不思議でなりませんが、その理由の一つとして言われているのが、当時、総務相だった野田聖子の関与です。夫の野田文信氏がブラックスターの創業メンバーの一人であることが後に明らかになったのです。 野田聖子前総務相(現在は衆議院予算委員会委員長)の夫の野田文信氏、歌手で俳優のGACKT氏が関与したことで話題になった仮想通貨スピンドル騒動に、また火がついた。スピンドルの企画会社「BLACK STAR&CO」(以下ブラックスター)が、業務委託していた下請け会社から報酬未払いで訴えられ、証拠資料には野田文信、GACKT両氏の関与を示す資料が添えられていた。「意思決定メンバーのファウンダー(創業者)報酬等」と題されたエクセル表である。宇田(修一ブラックスター前CEO)5%、平井(政光現CEO)3.5%など14の名(法人も)が並び、GACKT2.0%、「ふみさん」0.5%となっていた。この「ふみさん」が野田文信氏であるのは、後述するメッセンジャーアプリ「テレグラム」でのメッセージで明らかなのだ。(野田聖子の夫は仮想通貨「胴元」) ただ、7月19日に朝日新聞が報じた「金融庁の担当者を呼び、無登録での仮想通貨交換業を行なっていたとして金融庁から通告を受けていた業者を同席させたうえで、庁のスタンスを説明させていた」という問題は、夫の野田文信氏も絡んでいるだけに、今後、大きな問題に発展しかねない。 報道を受けて野田氏は、「仮想通貨業の一般的な説明を受けただけで、圧力ではない」と、会見で釈明、政治家としての認識不足を露わにした。秘書が呼び付け、監督官庁の担当者が議員会館の野田事務所に出向き、違法を疑われる業者に説明するのは、圧力以外の何物でもない。疑わしき業者は、監督官庁に自ら出向き、「意向を伺う」のが普通だ。(野田聖子と『GACKTコイン』をめぐる圧力騒動の全舞台裏) ちなみに、スピンドル事件に関しては、ブロガーの山本一郎氏が、当時、非常に厳しい口調でガクトを批判する記事(タレント「GACKT」が仮想通貨ICO参入も問題続発、フィンテックバブルはどうなるのか)を書いているので、さらに詳しい事情を知りたい方にはおすすめです。 ちなみに、この記事に対して、ガクトが自分のブログで、山本一郎氏に向けて「ココロからの殺意の気持ちを込めて」「帰り道の一人歩きには十分お気をつけください」と書いたことが脅迫に値するかどうかが、当時ネットで話題になりました(「GACKTのICO”SPINDLE”はどうしたら適法になるのか」にみる仮想通貨取引への注意喚起)。 上の文章、および引用先の記事(特に山本一郎氏の記事)を読めば、ガクトは逮捕されてしかるべきだし、芸能界からは永久追放されて当然だと私が考えている理由が理解していただけると思います。 バーチャル・イベント 様々なイベントが中止や延期されるなか、「バーニングマン」がバーチャル開催されるというニュース(砂漠の祭典「バーニングマン」ネット開催へ 日米の大イベントがバーチャルに見出す可能性)を目にして、色々なアイデアが頭に浮かびました。 このメルマガでも何度も書いていますが、新型コロナによる影響は一過性のものではなく、私たちのライフスタイルを大きく変えるものになると私は見ています。特に「人が集まること」そのものに価値がある産業への影響はとてつもなく大きく、これによって衰退してしまう産業もあれば、逆に新しく生まれる産業もあると思います。 そんな中で、私が大いに期待しているのが、「参加型のVRイベント」です。 この話をすると、「そんなことは既に(最近 Apple が買収した)NextVR とかがやっているよ」と言われそうですが、彼らがやっていることは、単にこれまで普通のカメラで撮影し、平坦な画面で見ていたイベントを、360度カメラを使って、没入感のある体験を提供するだけの話で、本当の意味での「参加」ではありません。 VR端末は、テレビよりはゲーム端末に近く、双方向なコミュニケーションを前提に作られているので、もっと沢山のことが出来るのです。

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