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第586回 パンデミック以降の世界を展望する その1

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…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… 第586回 パンデミック以降の世界を展望する その1 …━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… 世界恐慌で世界は根本的に変化 周知のように戦前の世界恐慌で、歴史の流れは根本的に変化してしまった。深刻な不況は1930年代の10年間継続し、ドイツのナチス政権成立や日本の軍部台頭の背景となり、世界で8000万人の死者を出した第2次世界大戦を引き起こした。そして戦後は、通貨と金の交換停止を基礎に成立する管理通貨制という新しいシステムに移行した。これで、中央銀行が通貨の自由な発行権を持つことになった。これを財源とした政府は、大規模な公共投資の実施で景気を調整すると同時に、健康保健や失業保険などのセイフティネットを充実させ、社会の安定を図ることのできる新しい資本主義の体制へと移行した。需供関係のむき出しの市場原理が経済を調整することはなくなった。 そして1990年代になると、政府は経済に介入するこの修正資本主義の基本原則は維持しつつも、新興国に製造業を奪われた先進国は金融産業に比重を移し、規制緩和を徹底して、国外の投資家が投資し安い環境を作った。戦前のような市場原理主義の復権である。 しかしそれは長くは続かなかった。2008年から2009年にかけて頂点に達した金融危機で、世界経済は甚大な影響を受けて収縮した。その後、2012年頃から世界経済は回復したものの、社会的格差拡大への憤懣が爆発し、世界各地で分断主義の極右勢力が台頭した。米トランプ政権による一国主義と、国際協調の無視はこの端的な現れである。 このように我々の資本主義社会は、歴史的な変動を何度か経験してきた。そのなかでやはり最大のものは、1929年から始まる世界恐慌を分水嶺とした転換である。世界恐慌までの古典的な資本主義を乗り物にたとえるなら、それは高速の馬車だろう。この馬車の性能はそれなりによく、毎時10キロ程度で走ることができた。経済でいえば年率プラス2%かから3%の成長率である。 しかし、この馬車のような旧式な資本主義の形が根本的に変化しないことには、社会の存続と維持は不可能になった。長期の戦争をなんとか生き延びた世界は、内燃機関のエンジンで走る自動車のようなシステムに移行した。この自動車は優秀で、年率プラス5%から10%の高速運転が可能だった。戦後の資本主義システムは、こうしたガソリンエンジン車をマイナーなモデルチェンジを繰り返しながら、ほぼ70年間まがりなりにも走り続けることが可能だった。 もちろん、このガソリン車が大きな壁に衝突して大破する危険性も指摘されていた。没落した中間層の社会的格差に対する怒りの爆発、巨大に膨らんだデリバティブ崩壊の危機、金融商品「CLO」の破綻、「ドイツ銀行」を始めとした大手金融機関の破綻、アメリカと中国の国際協調の既存の枠組みを無視した露骨な敵対関係、米ロの軍事的な対立など、体制的な危機の引き金になりかねない危機は多数あった。しかし、いま思えばそれらのどれも、各国政府によって暴発しないように管理されていたのだ。 これらは、既知の危機でしかなった。ガソリンエンジン車の存在を無効化させ、乗り物としての機能を完全に無意味化するほどの危機ではなかった。実はそれは、新型コロナウイルスのパンデミックだったのだ。このパンデミック以降、民主主義と資本主義の原理そのものが否定され、別の原理に置き換わる可能性すら出てきた。そうしないと、もはや我々の社会は生き残れないのかもしれないよいうのだ。 ●パンデミック後の転換、政府依存の体制 パンデミックはかならず収束する。「IMF」の第4のシナリオにあるように、2021年に新たなパンデミックが発生したとしても、それも収束することは間違いない。新薬やワクチンの開発は急ピッチで進んでいるので、収束する時期が早まる可能性も高い。 だが、だからといって、我々の生活が元の状態に戻るとは考えにくい。パンデミック終了後も経済的な混乱は非常に長く続くだろう。どの国も国内消費は大きく落ち込んでいるので、たとえパンデミックで寸断されたサプライチェーンが再構築されたとしても、生産された製品を吸収するだけの市場規模はもはや存在していない。過剰生産恐慌のような状態が長く続く可能性が大きい。長期化する厳しい不況である。 そのような状況で社会と国民が存続するためには、政府の給付への依存が高くなることは間違いない。政府の支給する所得保障や所得補助がないと、社会の維持が難しくなる状況だ。もし政府が十分な給付を提供できないとなると、社会不安の激増から社会の統合性を維持することも困難になる。 「MMT」の財政理論 そして、経済の循環と国民生活を政府の財政支出が支える体制を維持するためには、最近流行している「MMT」の財政理論を各国が一致して採用する必要性が出てくる。「MMT」の基本は、中央銀行は通貨の発行権を持っているのだから、必要なときに必要な分だけ通貨を発行して財政支出をすればよい。だから、政府の財政は国民から徴収した税には依存していないとする論理である。通貨の発行権がある限り、国民から税を徴収する必要性はない。税の徴収の意味は、税を支払うために労働せざるを得ない環境に国民をおくことで、経済の労働生産性を維持する目的がある。税が財政の基盤ではない。

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