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山本太郎氏:人類は新型コロナウイルスといかに共生すべきかを考える[マル激!メールマガジン]

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マル激!メールマガジン 2020年4月29日号 (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ ) ────────────────────────────────────── マル激トーク・オン・ディマンド 第994回(2020年4月25日) 人類は新型コロナウイルスといかに共生すべきかを考える ゲスト:山本太郎氏(長崎大学熱帯医学研究所教授) ──────────────────────────────────────  新型コロナウイルス感染症は、欧米諸国が落ち着きを取り戻しつつあるのに対し、日本は依然として正確な感染状況が把握できていないこともあり、早くも2週間後に控えた緊急事態宣言の期限の延長が取り沙汰される事態となっている。 まだまだ行動制限による新型コロナウイルスの抑え込みが必要な日本ではあるが、同時に、抑え込みに躍起になっている今だからこそ考えておかなければならないことがある。それは、どう考えても現在のような行動制限を未来永劫続けられるわけがない以上、その出口のタイミングとそれ以降われわれはコロナとどう向き合っていくのかという問題だ。  『感染症と文明』などの著書があり、感染症の歴史に詳しい長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授は、望むと望まざるとにかかわらず、この地球上に新型コロナウイルスというものが登場してしまった以上、人類はそのウイルスと共存するための道を探っていくしないと語る。撲滅させることは容易なことではないし、また必ずしもそれは得策ではないかもしれないと山本氏は指摘するのだ。  それはどういうことか。例えば人類は天然痘の撲滅に成功した。感染症を引き起こすウイルスで人類が完全に克服したのは、後にも先にも天然痘が最初で最後なので、これこそが人類の感染症医学の金字塔のように称賛されることが多い。また、確かにこれが大変な功績だったことも間違いない。 しかし、天然痘のウイルスが撲滅したことによって、その後に生まれた人類は撲滅前に生まれた人類が持っている天然痘に対する抗体を持っていないことになる。もし、将来、撲滅したと思っていた天然痘が何らかの理由で復活したり、あるいはそれと似通った感染症が登場した時、どちらの人類が生き残るチャンスがより大きいか。そのような意味も含めて、人類にとってウイルスというものは、単に抑え込んだり撲滅すべき対象と受け止めるべきではないと山本氏は言うのだ。  実際、人類にとってウイルスは、共存の方法を見つけるまではもっぱら恐ろしい存在だが、いざ共存の道を見つけることができれば、むしろ多様なウイルスや多様な感染症を抱えている状態の方が、そうしたものとは無縁の状態よりも、より安定していると考えることができるのだと山本氏は言う。  新型コロナウイルスも当面の医療崩壊を避け致死率を下げながら、共存の道を探っていけば、人類は2、3年以内に免疫の壁の目安となる人口の6~7割が抗体を持った状態を作ることは可能だろうと山本氏は指摘する。また、そうなった時、人類にとって新型コロナウイルスは他の4つのコロナウイルスと同じような、単なる風邪のウイルスの一つになっている可能性が大きいだろうと山本氏は言う。  その一方で、数年以内にはワクチンや治療薬が開発される可能性もある。未来は神のみぞ知るだ。しかし、一つはっきりしていることは、新型コロナウイルスが人類にとって決して最後の「新型」ウイルスとはならないだろうということだ。地球温暖化などの環境の急激な変化によって、地球上に人類に影響を与える新たなウイルスが登場する頻度は確実に上がってきている。 どんな感染症であろうが、強い病原性を持つウイルスに対しては、まずは人命を優先しなければならないが、危機的な状況を乗り越えたらやはり共存の道を探っていくのが現実的だろうし、人類にとって他に選択肢はないようにも思える。  感染症と人類文明という観点から山本氏と、新型コロナウイルスとの向き合い方や「コロナと共存する」ということの意味、新型コロナは社会のあり方をどう変えるのかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今週の論点 ・感染の速度が緩やかであれば、ウイルスの毒性は弱まる ・感染症が人類にもたらすものと、「ウイルス根絶」のリスク ・補償とともに、来たるべき新しい社会のイメージを伝えることの重要性 ・言葉の自動機械になり、感染者を糾弾する日本 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

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