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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第379号2020.4.28配信分
●いわゆる試乗記が読むに堪えないファンタジーに思える理由を考えた
凄い時代を生きているという実感がある。私の場合すでに還暦から8年であり、
世に言う15~65歳までの生産人口の対象から外れて久しいが、これが所帯を持ち
世帯主となって妻子を養うことになった1980~2002年までのいずれかの時期と重
なっていたとしたら戦慄せざるを得ない。新型コロナウィルスCOVID-19によって
もたらされた現在の状況は、今を生きるほとんどの者にとって初め経験する世紀
の一大事。誰もが緊張する事態であることは間違いない。
私がフリーランスの自動車ライターなる職にありついた1970年代末。日本社会
は再起のタイミングにあった。戦後の復興期を経て、最長といわれた”いざなぎ
景気(1965年から70年までの57ヶ月)”に終止符が打たれたところで第一次石油
危機が勃発。店頭からトイレットペーパーが蒸発し、物価が瞬く間に跳ね上がる
『狂乱物価』を経験したのが1973年。折悪しく強化されることになった排出ガス
規制が自動車産業に壊滅的な打撃を与えた。自動車メーカーが絶望の淵に沈んだ
暗黒の時代を知る世代も少なくなったが、あの危機を克服した感覚と再び挑戦者
としての世界を目指す機運が日本全国に満ち溢れた時代だった。
安全保障を同盟国アメリカに丸投げして経済的発展に邁進する。電子制御技術
に技術的な活路を見出し、生産と製品の両面で世界初を掛け声にモノ作りに磨き
をかける。人口増加にともなう国内市場の拡大と合わせて、まずは激しいシェア
争いで国内競合各社が切磋琢磨する。自動車は裾野の大きな基幹産業に相応しく
多様性と性能/技術水準の両面で鎬を削りあい、1980年代を通じて蓄積された競
争力を背景に国際舞台で優位に立つ道筋を築いて行った。
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