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週刊 Life is Beautiful 2020年5月5日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん コロナ後の世界:小売業界と流通 ここ数年、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を目にすることが増えました。元々の意味は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という汎用的なものでしたが、最近は「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味で使われることが増えて来ています。 特に日本では、私が「ITゼネコン」と呼ぶSIerが、DXをキーワードとして、新たなビジネスの受注に結び付けようとしています。 多くの企業がDXビジネスを追求している中で、富士通の最大の強みであるテクノロジーと、強固な顧客基盤に支えられた業種業務ノウハウを活かして、お客様、社会が求める価値を実現するDXを追求していきます。(富士通、https://www.fujitsu.com/jp/dx/) めまぐるしく変わる社会や顧客のニーズに合わせて、新たな価値をスピーディーに生みだしていくためには、ビジネスのやり方や組織の振る舞いそのものの変革が求められています。DXの実現は、企業が将来にわたって競争力を維持し続けるための必要条件であり、重要な経営課題の一つとなっています。(NEC、https://jpn.nec.com/dx/index.html) 経団連がようやく最近になってパソコンを導入したことからも分かるように(経団連会長の執務室、ついにPC導入。中西会長「正直、無いのは驚いた」 事務方「対面が基本だから…」)、日本企業のIT化は、欧米と比べて大幅に遅れています。その意味では、そんな企業から「DX予算」をもらうことを狙う戦略は、SIerの商売としては正しい選択だと思います。 しかし、私は本当のDXは、業界の外から起こると考えています。既存の書店が、IT技術を駆使したアマゾンに淘汰されてしまったように、過去のしがらみを一切持たない企業が、IT技術を最大限活用し、業界のあり方そのものを変えてしまうのです。つまり、「テクノロジーを活用した企業の新規参入により業界のビジネスのやり方が根底から変わる」のがDXなのです。 とはいえ、業種によっては、既存の企業の圧倒的なブランド力や規制により、新規参入が簡単ではない(つまり、DXには時間がかかる)産業があります。典型的な例が銀行です。技術的・経済的に見れば、インターネットを最大限に活用した、店舗をもったない「ネット銀行」が圧倒的な勝利を収めてもしかるべきなのに、消費者による「信用」が重要で、かつ、数多くの規制がかかったこの業界で、フィンテック・ベンチャーがシェアを奪うのは簡単ではありません。 しかし、そんな中で起こった、今回のコロナ騒動は、様々な業界に大きなストレスを与えており、それが「進化圧」となって、DXが加速しつつあります。 もっとも顕著なのが、小売業界です。コロナ騒動前から、小売業界はオンラインに客を奪われ、苦しい戦いを強いられていましたが、コロナによるロックダウンとshelter-in-placeが、「ラクダの背を折った最後の一本の藁」となり、彼らに壊滅的なまでのダメージを与えています。 「Over 50% of department stores in malls predicted to close by 2021, real estate services firm says」 によると、米国のデパートの50%以上が来年の末までには閉じられ、これが(有名デパートを広告塔として集客している)ショッピング・モール・ビジネスに大きなダメージを与えることになると予想されています。 下のグラフは、米国のデパート業界の主要な企業(Macy’s、Nordstrome、Kohl’s、JC Penny)の最近の株価の推移をAmazonと比べたものです。コロナ騒動が始まった3月から、デパート業界の株価は50%~75%の下落をしていますが、逆にAmazonの株価は、40%近く上昇しています。 コロナ騒動がどのくらい続くのかを予測するのは難しい状況ですが、有効なワクチンや治療薬が出来て、人々が安心して生活できるようになるまでには、少なくとも18ヶ月はかかるし、その後の人々のライフスタイルが以前のものとは大きく変わることを想定すれば、デパートどころか、ショッピング・モールの存在すら危ぶまれる状況になると私は見ています。

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