石川ともひろの永田町早読み!
/ 2020年5月10日発行 /Vol. 399
◆空前の「コロナ国債」 大量発行後に待ち受ける世界とは
日本の当初予算が100兆円を超えた。私が衆議院議員選挙に立候補した2005年の当初予算が82兆円だったので、毎年約1兆円ずつ増加していることになる。
社会保障費の負担が年々増えていることが原因だが、国の借金はいよいよ1000兆円を超え、どこまで借金ができるのか誰もが予想できない状況になっている。
財務省はこれまで、これ以上借金を増やさないようにプライマリーバランスを保とうと努力してきた。 しかし、今回の新型コロナウイルスの蔓延によって、財政規律より国民生活を守るための大盤振る舞いを余儀なくされた。 おそらく1次補正予算だけでなく2次補正、場合によっては年末に3次補正の必要も出てくるだろう。
最初の対策で不満を示す国民からの批判を和らげるためには、2次補正が必要となる。 しかし、コロナ不況の影響は大きいので、二回の対策でも不満な国民がたくさんいることが予想される。 史上最高の大盤振る舞いとなるだろう。 そうなると、当初予算と補正予算を合わせて150兆円から200兆円の決算となる可能性がある。
これは日本だけではない。 むしろ日本は、諸外国より補償費用が少ないと批判されて国民全体への10万円給付を決めたほどだ。
では、日本も諸外国もどこからお金を持ってくるのか。
ほとんどの国が赤字国債の発行でまかなうしかない。 名付けて「コロナ国債」だ。 ここで注目されるのが「現代貨幣理論(MMT)」の考え方だ。
この経済理論を簡単に説明すると、
・政府が自国通貨建てで借金をしても、高インフレにならない限り財政破綻や債務不履行には陥らない
・仮にインフレになったとしても、増税や政府支出の減少でコントロールできる
というものだ。
MMT理論の火付け役となったのは、米国史上最年少の女性下院議員となったアレクサンドリア・オカシオ・コルテス氏(30)だ。 民主党リベラル派のホープである彼女がMMT理論を「財政赤字や政府債務を心配することのない経済理論」と支持表明したことがきっかけで世界に広まった。 その後、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏らがMMT理論には大きな欠陥があることを示すなど経済学界では論争が巻き起こっている。
日本でもMMT理論は注目されており京都大学の藤井聡教授が推進派の代表だろう。 MMT理論は「租税が貨幣を動かす」という点が大きなポイントだ。 自国通貨建ての支出能力を持っている国家は無限に通貨を発行できるので、財政赤字を気にせず通貨を発行して景気浮揚策を講じるのが政府の仕事と説いている。
詳しくは『MMT〈現代貨幣理論〉とは何か』(島倉原・著 角川新書)を読むとより理解が深まるのでお勧めしたい。
しかし、MMT理論はバラ色の話だけではない。 インフレが進めば……
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