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週刊 Life is Beautiful 2020年5月12日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん コロナ後の世界:解雇規制 今朝のトップ・ニュースは、米国で先週も失業手当の申請をした人が320万人を超え、4月だけで2500万人、3月も含めると3350万人もの人が、職を失った、というレポートでした。 結果として、米国の失業率は、2月の 3.5% から 14.7%と一気に増え、大恐慌以来最悪の状況になりました。 こんな状況になったのは、各州政府により、「ロックダウン命令」が出されたため、工場、工事現場、小売店、レストラン、娯楽施設などが営業できなくなったため、多くの従業員が解雇されてしまったのです。 簡単には従業員を解雇出来ない「解雇規制」という壁がある日本と違い、米国では「仕事がない」ことは従業員を解雇する「まっとうな理由」になるので、この手の事象が起こると、多くの従業員がすぐに解雇されてしまうのです。 最も分かりやすい例が、工場や工事現場で、工場や工事現場が政府の命令により閉鎖されてしまったら、当然ですが、そこで働いていた人たちの仕事はなくなってしまうので、すぐに解雇されてしまうのです。 経営側は、解雇により固定費を最小限に抑え、ロックダウンの時期を乗り越え、ロックダウンが解除されたら再び同じ人たちを雇い入れて、以前と同じような工場での生産や工事を再開する。それが、(日本のような雇用規制のない)米国での自然なビジネスのあり方なのです。 そうは簡単には行かないのは、レストランや航空会社などの、ロックダウン解除後も顧客が簡単には戻って来ないだろう業種のビジネスです。顧客が戻らなければ、ビジネスは成り立たないので、従業員の再雇用どころか、事業の継続そのものが難しいと思います。あるエコノミストは、米国のレストランの4〜5割が閉業することになるだろうと予測しています。 微妙なのは小売業で、Costco、Walmart などの大手がロックダウン中もしっかりと業績を伸ばしているのに対し(食料品も売っていたために、閉じる必要がなかったのです)、デパートやショッピング・モールなどは、ロックダウンの影響を直接受けています。ロックダウンが解除された後も、デパートやショッピング・モールへの客足は遠のいたままになると予想されており、厳しい状況は続くだろうと覆います。 日本の場合は、「命令」ではなく「自粛要請」である上に、簡単には従業員を解雇出来ない仕組みになっているため、状況は大きく異なように私には見えます。 過去のデータによると、GDPが1%下がった場合、米国では失業率が0.5%上昇するのに対し、日本では 0.1% しか上昇しないそうです。つまり、日本の場合は、景気が多少悪くなっても、簡単には従業員を解雇しない(もしくは出来ない)のです。 しかし、この状況が何ヶ月間も続くと、日本企業であっても、そんな悠長なことはしていられなります。工場や店舗が閉まっていて仕事がないのにも関わらず、その人たちに給料を払い続けることは無理なのです。 そんな企業向けの特別な融資の仕組みもいつくかありますが、融資してもらったお金はいつかは返す必要があるので、コロナ後の先行きが明確でもないのに融資を受けるのは、必ずしも得策ではありません。 そうなると、経営者に残された道は4つです。固定費削減のための(大量)解雇破産自主廃業事業売却 どれも簡単な話ではありませんが、事業を継続したいのであれば、一度、ビジネスのあり方を根本的に見直し、新しいビジネスのスタイルに不要な人たちを一斉に解雇して固定費を思いっきり下げた上で、再スタートすべきなのです。 新型コロナは、色々なところで負の影響を社会に与えていますが、これまで様々なしがらみを抱えていたために、時代遅れな体質を変えることが出来なかった企業にとっては、別の形での再スタートを果たす、絶好の機会なのかも知れません。 分かりやすいのがデパートです。今や、デパートという小売形態が時代にマッチしていないことは明確なので、店舗を捨てて、オンライン販売に特化した会社になる立地条件の良い場所にビルを持っていることを活用して、不動産事業に専念する地下の食料品売り場を活用して「食」で勝負する会社になる などのドラスティックな事業形態の変化が必要で、そのためには「従業員の8割を一気に解雇する」ぐらいの荒療治が必須だと私は思います。 私がこの手のことを言うと、「日本には雇用規制があるから無理」と言う人がいますが、そもそも雇用規制の定義が曖昧だし、法律は社会を良くするために存在することを考えれば、企業を破滅に追い込むような雇用規制そのものを、そろそろ見直すべきだと私は思います。

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