日刊 大石英司の代替空港
▲▽自警団の朝は早い▽▲
自粛自警団の朝は早い。
中学卒業と同時に故郷九州から集団就職列車で上京し、今は東京近郊に暮らす
下作延康三・トメ子夫妻は、始発バスが停留所を通過する前に始まる。玄関に堆
く積まれているのは50枚入りマスクの山だ。
「マスクが売ってないと泣き言を言う奴らは努力が足らんのです。朝の6時から
行列に並ぶ覚悟もない奴らの泣き言に社会が付き合う必要はなかとです」
始発バスに揺られること20分、私鉄路線が交差するこの乗換駅の利用者は多い。
だが、下作延夫妻は、声高に主張することはしない。ただ彼らは、ゼッケンを身
につけて、通勤客に深々と無言でお辞儀するだけである。
下作延氏のゼッケンには、「ステイ、ホーム!」。背中側には、「自宅で過ご
そう!」。奥方のゼッケンには「年寄りを殺す気か!」「ジジババに死ねという
のか!」と描かれている。
だが、彼らに向けられる世間の視線は冷たい。それでも夫妻は決してめげるこ
とはない。
「私の世代はね、60年安保で国家権力と戦ったんです。凍えるような真冬に機動
隊の放水を浴び、催涙ガスの水平発射で大勢の同志を失いました。だから、少数
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