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高野孟のTHE JOURNAL Vol.447 2020.5.25
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1048》
「10月」という壁を乗り越えられそうにない東京五輪
ーーIOCから示された厳しい判断
【2】《CONFAB No.447》
閑中忙話(5月17日~23日)
【3】《FLASH No.354》
20世紀的な価値観の問い直しを迫られるポスト・コロナ
時代
ーー日刊ゲンダイ5月21日付「永田町を読む」から転載
【4】《SHASINKAN No.396》付属写真館
■■INSIDER No.1048 2020/05/25 ■■■■■■■■■■■■
「10月」という壁を乗り越えられそうにない東京五輪
ーーIOCから示された厳しい判断
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東京五輪の準備作業を統括する国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長は、コロナ禍が地球上から一掃されない限り東京五輪の開催はあり得ないと述べ、その判断の山場は「今年10月頃になる」との認識を示した(5月21日付豪紙オーストラリアン)。日本の各紙はやや遠慮がちに表現を和らげているが、同紙の見出しは「東京五輪は決して実現しないだろう」である。
コーツは、新型コロナウイルスの感染者が急増するブラジルを例にあげて、数少ない先進国などを別にすると多くの国にとってこの事態に対処するのは困難で、またワクチンは仮に出来ていたとしても世界中に行き渡るのは簡単ではないため、「206 カ国・地域から1万1000人の選手のほか、2万人の報道関係者、6万人のボランティアらが集まる五輪開催は現実的に難しい」と指摘。さらにその上で、彼は「東京五輪が開催できるとすれば2021年限りで、再延期はない」とも断言した。
同日、IOCのトーマス・バッハ会長も英BBCに対し「21年開催が無理になった場合は中止」との見通しを示し、その理由として「日本の組織委が永久に3000人や5000人も雇用を続けることはできないことは理解できる。また毎年、世界中のスポーツ日程を変更することはできないし、アスリートを不確実な状況にとどめてはおけない」などを挙げた。
橋本聖子五輪相や日本組織委は「そんな話は聞いていない」の一点張りだが、IOC 側が言い出していることは極めて現実的で、結局日本側もそれに従わなければならないことになるだろう。
●今秋に第2の大波が?
コーツは、決断の時期がなぜ今年の10月なのかの理由を明示していない。しかし、今は次第に沈静化しつつあるように見えるコロナ禍が今後も世界各地で小さな波を繰り返しながら、この秋頃には大きな第2波となって再び全世界を襲うのではないかという観測は、多くの専門家の間で共有されている。ニューヨーク・タイムズの常連コラムニスト=ニコラス・クリストフは、23日付同紙オピニオン欄の「忘れるな、コロナウイルスはまだ謎なのだ」と題した論説で、「多くの疫病学者が深く懸念するのは、われわれがこれまでに耐えてきたものよりもっと過酷な、大きな第2の波が今秋にやってくることである」と指摘している。おそらくコーツは、そのような専門家の間の常識とも言える識見に従ったのだろう。
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