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【Vol.327】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「どうしてトランプはマスクを拒否するのか?」  トランプの「マスク嫌い」は有名ですが、とにかく各州でガイドラインを 決めて公共の場所ではマスク着用をという規制をかけても、大統領自身が守 らないのですから、話になりません。  一体どうしてなのかと問われた際に、トランプの答えは2パターンあるよ うです。1つは「うるせえな。お前らフェイクメディアの見てないところで は、ちゃんとしてたんだ」と開き直るもの、そして最近出てきた2つ目のも のは「俺様は、お前らフェイクメディアの喜ぶようなネタをやる気はない ね」というものです。  とにかく頑固なまでに「公衆の面前でのマスク着用は拒否」ということな のですが、一体どうしてなのでしょう?  まずは、アメリカの保守カルチャーの中にある「マスク嫌い」というのが ベースにあります。そのルーツは、そもそもは西部劇だと言えます。つまり、 マスクをして顔を隠しているのは「悪漢だから撃たれても仕方がない」とい うのが常識であり、反対に「信じていい人間だというアピール」のためには マスクはしないということになります。  究極は、赤いバンダナを巻いて口を隠すファッションで、西部劇では鉄道 ギャングの定番スタイルということになっています。正義の存在である合衆 国大統領としては、絶対にイヤだと言うわけです。  また、マスクをすると「偉く見えない」ということがありそうです。世界 の指導者や元首の中でも、「自分を偉く見せたい」という輩(やから)に限 って、他の人々にはマスクをさせるくせに、自分はしないというのがありま すが、トランプの場合はその典型例だと言えます。  もっとも、例えば日本の天皇皇后両陛下などは、マスク姿を公開しており、 そこでも決してカリスマ性を失ってはいません。お二人の場合は、目線の向 け方、立ち居振る舞い、背筋の伸ばし方など、アーチストのレベルと言って いい訓練を受けているので、マスクをしても存在感を損なわないわけですが、 トランプの場合はそうした訓練とは無縁ですから、余計に気にするのでしょ う。  後は、トランプが自分の「コア支持者」は、「ロックダウン反対」で「マ スクも反対」だということを知っていて、これに迎合しているということも あると思います。とにかく、もう経済活動の規制には飽き飽きしたし、初夏 になったので、ビーチに行きたい、バーで馬鹿騒ぎがしたい、スポーツ観戦 で騒ぎたいという層が、自分の支持層だというわけで、徹底的にそこに馴れ 合うことで、支持母体を固めようという作戦だと思います。

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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