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言いすぎか!!
弁護士北村晴男 本音を語る
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Vol.94
2020.5.30
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目次
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【1】 『検察庁法改正案の特例規定は
バブル期の人材不足に対応するためか』
【2】 『北村晴男の"素"』
【3】 『番組出演予定
イベント情報』
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【1】 『検察庁法改正案の特例規定は
バブル期の人材不足に対応するためか』
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黒川弘務東京高検検事長(63)が5月21日に辞任した。
産経新聞の社会部記者、朝日新聞の元検察担当記者と、外出自粛要請期間に「賭けマージャン」をしていたことが発覚し、その責(せめ)を負った。
これを受けて、毎日新聞と朝日新聞は世論調査を行った。その結果、安倍内閣の支持率が、毎日新聞(23日)は27%、朝日新聞(23、24両日)は29%と、第2次安倍政権発足以来の最低を記録した。
黒川氏の賭けマージャンは官邸とは何の関係もないが、そこに至る「官邸が黒川氏を無理矢理(ムリヤリ)検事総長にしようとし、検察を官邸の都合の良いように操ろうとしている」などとする一連の朝日新聞によるキャンペーン(印象操作)の結果だ。
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朝日新聞は再三「黒川さんが官邸に近い」と言い募(つの)っているが、安倍首相は「黒川さんと親しいと言われるが、別に親しくない」「一緒に飯を食ったことさえないのに」「完全に冤罪(えんざい)なんだよね」と、周囲に漏らしている。
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須田さんによると、稲田さんの残留が決まり、林さんが次期検事総長になることがほぼ決まりと思われたことで、朝日新聞はたいへん喜び、記者が名古屋までお祝いに駆けつけたという。
「ゴーン氏が逮捕された時に、羽田空港に居合わせたメディアは1社、朝日新聞だけです。なぜその情報をキャッチすることが出来たのか。林名古屋高検検事長からリークを受けたからです。検察と朝日新聞はもたれ合いの構図、協力関係にある。朝日新聞は自分たちにとってやり易い環境・状況を作るために、何が何でも林名古屋高検検事長に検事総長になってもらいたいんですよ」(【須田慎一郎】朝日は検察人事への介入をやめろ!第二弾 2月1日より)
その後、法務・検察上層部は、当初の予定通り「黒川さんを検事総長に」との方針を固め、「公務員法の規定による定年延長を行う」との方針を内閣に上げてきた。内閣はこれを承認。
すると、この定年延長は昭和56年の人事院解釈に反する、と批判され、「解釈の変更」と内閣は説明せざるを得ないことになる。39年前の人事院答弁を知らなかった法務・検察は(もしかすると人事院も)実にお粗末だ。
いずれにしても、法務・検察内部での黒川派、林派の権力闘争に内閣が巻き込まれたもの。
なお、公務員法と検察庁法は一般法と特別法の関係にあり、「検察庁法に規定がない定年延長については、一般法である公務員法を適用可能」と考えることは、法解釈としては十分に可能で、ただ39年前の人事院答弁と異なる点が問題とされた。
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これは、「三権分立」の問題ではなく、「検察の独立」の問題だ。
検察は、時に行政庁のトップ、与党国会議員、大臣、内閣総理大臣に対しても、そこに犯罪が行われていれば立件すべき職責を負っている。
そのため、検察は内閣との間で相当の独立性を保つ必要がある。しかし、「完全な独立」は許されない。検察は強大な権力機構で、ある意味とても恐ろしい組織だ。いざとなれば冤罪(えんざい)を作り出すのも朝飯前だし、身内の犯罪など庇(かば)い放題だ。そんな組織に「完全な独立」を許すことがあってはならない。
そこで、民主的コントロールを及ぼす数少ない方法の一つとして内閣による検事総長などの任命権がある。「あまりにも違法・不当な事をしたら検事総長の首も切れるのですよ」という牽制(けんせい)だ。内閣と検察との間には絶妙のバランスが保たれているのだ。この絶妙のバランスが、検察庁法改正案によって崩れてしまうと言えるのか、が重要。私の実感からすると、検察はそんな柔(やわ)な組織ではない。もっとはるかにしたたかで、恐ろしい組織だ。
私が話を聞いた現役の中堅クラスの検察官、検察OBは、口をそろえて「定年延長特例規定があることによって、検察が内閣の言いなりになるなんてことは、あり得ない」という。
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その唯一の例外が、個々の事件について法務大臣が検察総長だけを指揮できることになっていること。
だが、仮に内閣が検事総長に個々の事件について口出しをした場合には、それが不当な口出しであれば、当然ながら、検察官は必ずリークする。
一つ例を挙げると、2010年に大阪地検特捜部で起こった証拠改ざん事件。
検察官が証拠物件のフロッピーディスクを改ざんした事件でも、義憤(ぎふん)に駆られた検察官がリークしている。
同僚の検察官が犯した悪事でもリークする検察官がいる。まして、検察が正義感で動こうとしていることに内閣が政治的な意図で何かをしようとしたら、必ず新聞などにリークされることになる。
そのことを内閣も100%わかっているので、まず不当な手出しはできない。これをすれば必ず世論の反発を浴びて、下手をすると倒閣。政権の座から引きずり降ろされることになるからだ。
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では、なぜ定年延長の特例をつけたのか。法案を作るからには、法務・検察にとって使い勝手がいいものを作ろうと考えたに違いない。
以前はものすごく優秀だったとしても、歳をとってくると頭が働かなくなる人もいる。極端な例では認知症になる人も出てくる。あるいは、ものすごく傲慢になってしまう人もいる。
謙虚かつ有能で、統率力もある。誰からも信頼される。そういう人は上に置いておきたい。そうでなければ、組織がダメになる。
そういう人事を永続的に行おうとすれば、1年ごとの延長を認めるというのは、最高に使い勝手が良い。最長3年間。それだけフレキシブルにしておけば、下から良い人材が上がってくれば、「ありがとう。お疲れさま」と言えばいい。まずはそう考えられる。
だが、「最長3年間伸ばすことができる」とした理由の中に、法務・検察は決して誰にも言えない検察庁の実情が隠れている。
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