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週刊 Life is Beautiful 2020年6月2日号

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん デモ・暴動・略奪・戒厳令 黒人男性 George Floyd 氏が白人の警察官に首を抑えられた結果死亡した事件を受け、全米で大規模なデモが起こり、それが暴動・略奪へと発展し、各地で戒厳令が敷かれています。 こんな状況になったのは、私が米国に来てから二度目で、前回は1992年の Rodney King 氏(同じく黒人男性)に白人警官が取り締まり中に暴行を加えた事件を発端にしたものでした。 これらの事件の背景には、奴隷解放以後も、黒人の多くは未だに社会の低層で苦しんでいる米国の一部の地域には未だに黒人を蔑視する白人至上主義の人たちがいる という米国特有の事情があります。これらの事件以外にも、黒人に対する差別行動は、残念ながら一部の地域では頻繁に行われており、それが死亡事件などに発展した際に、普段から行われている差別への憤りに火をつける形となって、大規模なデモから暴動まで引き起こすのです。 ちなみに、デモに参加している人たちも大半は平和的に参加しているのですが、一部の過激な人たちが暴力に打って出た時に、群衆心理が働き、そんな人たちまで暴動に(被害者、もしくは加害者の一部として)巻き込まれてしまうのです。 暴動が起こった時に、しばしば同時に起きる強奪(Looting)は、「某同時の混乱に乗じて物を盗んでも捕まらないに違いない」という群衆心理が働いた結果のものですが、もともとデモに参加していなかった人たちがわざわざ暴動の現場にまで足を運んで強奪を働くという現象が起こっている点が注目に値します(映像を見ると、多くの白人も強奪に参加しています)。 今回は、新型コロナ騒動が全米で4000万人もの新たな失業者を生み出した直後でもあるため、社会に不満を持ち、「何も失うものはない」人たちが街に溢れており、彼らが(デモではなく)強奪に積極的に参加しても全く不思議はありません。 つまり、今回の騒動は、普段から溜まっていた黒人の怒りと不満にGeorge Floyd 氏の殺害事件が火をつけた形で始まりましたが、そこに新型コロナによって生み出された4000万人の失業者という社会の歪みがさらなる燃料となって炎を大きくしているのです。 その意味では、今回の暴動・強奪は、社会の歪みがもたらした「起こるべくして起こった事件」であると言って良いのです。 なぜ日本政府が提供するソフトウェアは使えないのか 先週、「雇用助成金のオンライン申請を停止 開始初日にトラブル」という報道がありました。 厚生労働省は20日から運用を始めた「雇用調整助成金」のオンライン申請でシステムトラブルが発生し、受け付けを停止したと発表した。再開のめどは立っていない。(中略) 厚労省が調べたところ、同じタイミングで申請した人に同じIDが割り振られ、先に登録した人の氏名、携帯電話番号、メールアドレスなどが見られるようになっていた。パスワードや給与情報も見られるようになっていた可能性があるという。 「同じタイミングで申請した人に同じIDが割り振られ」という部分がとても重要で、まともな人がソフトウェアの開発に関わっていたら、決して生じないようなミスです。この手のシステムにとって、IDの発行は要であり、ID発行がだらしないサービスは、麺が茹で過ぎなラーメンのようなものです。 この手のバグは、単に「担当者のミス」で生じるものではありません。大学でコンピュータ・サイエンスを勉強した人であれば、こんな初歩的なミスは決してしないし、この手のバグが紛れ込まないための様々な仕組み(コード・レビュー、アーキテクチャ・レビューなど)が存在するはずです。 つまり、よほどの「構造的な問題」がない限りは、こんなバグが見逃されるはずがないのです。 ラーメン屋で言えば、「麺の茹で方がラーメンの命であることを知らないバイト君が麺を茹でている」ようなイメージです。これはバイト君が悪いのではなく、バイト君にそんな重要な仕事を任せてしまった店長が悪いのですが、さらに遡れば、そんな店長を雇ってしまう人事システムが悪いのです。 こんなバグが生じる背景には、政府から受注したITゼネコンには自らソフトウェアを書く人・書ける人がおらず、仕様書を書いて下請けに丸投げするだけその下請けは、大学でちゃんとソフトウェアの勉強をしていない文系の派遣社員を低賃金で雇い、劣悪な労働環境でコードを書かせている書かれたコードをレビューをする習慣やシステムが存在しないクライアントの打ち合わせ、仕様書の作成、見積書の作成などには膨大な時間を書けるわりに、コードのクオリティを上げることには時間をかけないITゼネコンには役所からの天下りが、下請けのソフトウェア会社にはITゼネコンの天下りが役員・顧問・相談役として働いており、ほとんど仕事をせずに「口利き」だけをして高給をもらっている。 などの、日本特有の事情があると考えて間違い無いと思います。

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