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【Vol.329】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「バイデンの副大統領候補、下馬評リストをチェックする」  突如全米で沸き起こった「人種差別反対デモ」の輪は、民主党の統一候補 であるジョー・バイデン氏を揺さぶっています。短期的には、非常に攻勢に 出ていると言って良いと思います。バイデン氏は、長い間、コロナ危機への 対応として自宅のベースメント(地下室)におけるリモート演説を主体とし ていたのですが、殺害されたフロイド氏の葬儀がテキサス州ヒューストンで 行われると、現地へ飛んでフロイド氏の遺族を弔問、葬儀にも参列して存在 感を示しています。  そんなわけで、バイデン氏としては、どうやら、この事件を契機に一気に リアルな世界での選挙運動を再開する構えのようで、タイミング的にもそれ でいいと思います。一方で、6月6日には、そのバイデン氏は、予備選にお ける獲得代議員数がマジックナンバーの1991を超えたことで、正式に民 主党の統一大統領候補としての地位が確定したのも事実です。  そのバイデン氏ですが、同時に大きな岐路に立たされているのも事実だと 思います。問題は副大統領候補を誰にするかです。  まず、77歳と高齢のバイデン氏にとっては、「万が一」の際には大統領 職に耐えうるだけの人物を副大統領候補に指名する必要があります。これは もう絶対条件とでも言うべきものです。また、万が一、8月の党大会までに 状況の変化があれば、一旦副大統領候補に指名した人物に大統領候補の座を 譲るということも可能性としてはゼロではありません。例えばコロナ第二波 が深刻化した場合には、やはり若い世代のリーダー、少なくともトランプよ り若い60代以下の人物でないと話にならないからです。  それはともかく、バイデン氏は、TV討論の席上で「副大統領候補は女 性」にすると明言しています。公式にそうした確認がされているかどうかは ハッキリしないのですが、明らかに言質を取られたのは事実で、その後3ヶ 月以上訂正していないので、こうこれも条件として固まっていると思います。  では、誰にするか・・・これは大きな問題です。そこで、今回は下馬評に 上がっている候補について着眼点を確認していこうと思います。 (1)エイミー・クロブチャー上院議員  恐らくは大本命だったのだと思います。ミネソタという左右に揺れるスイ ング州で、保守票を抑えて勝ってきた上院議員、しかも大統領候補としてT V討論でも善戦、更には穏健中道派で、中西部の中道票を取るのには絶好の 立ち位置ということで玄人筋の評価も高かったのです。  ですが、そんな中で、今回のフロイド氏の事件が発生してしまいました。 まず、この事件が、ミネソタ州で発生したことで、彼女の立場は苦しくなり ました。とにかく、ミネソタの白人というだけで、地元はともかく、全国的 には「差別している側」というイメージを持たれてしまうのは仕方がありま せん。  それどころか、かつて同州の郡検事であった時期に、今回の主犯格の警官 が過去に起こした暴力事件を彼女自身が不起訴にしているという「爆弾材 料」も抱えているのです。となると、ミネソタ州警察の問題について責任の 一端を担っていると言われてもおかしくありません。彼女の「目」は限りな く消えたと考えられます。 (2)グレッチェン・ホイットマー知事  ミシガン州の知事です。この人もクロブチャー氏と同じく、スイングする 中西部の中で、保守票を抑えて勝ってきているわけで、バイデンと選挙戦の 戦術的には補完関係にあります。また、ミシガンというのは、2016年も、 そして20年も勝敗を決する天王山ですから、そこで民主党の知事を張って いる彼女への期待感はあるわけです。  問題は、それゆえにトランプ派の絶好のターゲットになってしまっている ことです。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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