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2020.07.06発行 NO:0077
家畜人ヤプー倶楽部(家畜人ヤプー全権代理人 康芳夫)
もうひとつの家畜人ヤプーの世界!!日本初の高級SMクラブ『家畜人ヤプーの館』
第一章 割腹
毎月 第1月曜日(祝祭日・年末年始を除く)発行
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第一章 割腹
「マスター、まあ夕べは一睡もできなかったわよ。だってさ紀尾井町のニュー
コタニに泊まったんだけどさ、隣のお部屋からさ、あれの声というの? よがり
声というかさ、それも一対一とかいうんでなくてよ、豪華絢爛よね。一人だけ
おじんの声でさ、あとはいきのいい若人の声が三、四人かな。それも体育会系
ぽくってさ、自分はもう何とか何とかです、とかね。次は自分も行きますとか
さ、最高っす。明日はどうなってもいいです。吹っ切れましたとかさ。特攻隊
の映画のさ、突撃前のワンシーンを思わせるような空気でさ、いろいろとわけ
のわかんない、言葉にならない叫びが延々と続くのよ。夜っぴてよ。もう勘弁
してよって感じ。
でも不思議とね卑猥とか猥褻な感じはしなかったわね。むしろプロレスのバト
ルロイヤルって感じかな。入り乱れているようでも何か統制がとれていたみた
いでさ、それもタイトルがかかっていて、切羽つまりながらも究極技の応酬で
真剣勝負という感じ。ああそうそう、おじんのことを若人たちがね先生と呼ん
でたかしらね。先生と呼ばれる人種ってさ、往々にしてさ、教師にしても坊主
や医者なんかも助平が多いっていうじゃない? そんなわけでさ、高いお金払っ
てさ、優雅な一夜を過ごしてさ、英気を養うつもりだったのにさ、台なしだっ
たわよ。お化粧のノリが悪いったらありゃしないわよ」
と初対面の客が、長広舌を振るってマスターの丸木戸貞男に語りかけてきた。
声の調子はさほど大げさではないが、ゲイ特有の低音で周りの人の耳目を集め
ていることを十分意識しつつ、話の内容の過激さの反応を楽しむかのように、
貞男に話しかけてきた。
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