■「どの会社」で働くかが大事というウソ
職場で「ホント」のこととして定着しれている考えや慣行の多くが、
実際には、そこで働く人々を助けるどころか、彼らを激しくいらだ
たせ、疎んじられている。
仕事の世界は、欠陥の多いシステムやプロセス、ツール、前提で満
ちあふれている。そのせいで、日々の仕事で個性を発揮することが
できなくなっている。
このことは、職場に関するデータで裏づけられてる。労働者のやる
気、すなわち「エンゲージメント」は世界中で低い。熱意を持って
仕事に取り組む労働者の割合は「20%」にも満たないのだ。
経済学者は、生産性が伸び悩むのは「かつて生産性を高める効果が
あった技術や戦略がことごとく実行に移されたからだ」という。い
ずれにしろ、現行の慣行はどれも大して役に立っていないのだ。
★
慣行という名のもとに、採用から評価、研修、給与、昇進、解雇ま
で、職場で起きるほとんどすべてが決定されている。だが「本当」
と信じられていることの大半が「実はまったくの的外れ」だ。
こういう慣行を「誤解」や「虚構」「勘違い」と呼ぶこともできる。
だが、ありのままの世界から遠ざけるために、意図的に用いられて
いる気さえする。だから、ここでは「ウソ」と呼ぶ。
「どんな創造活動も破壊活動から始まる」とピカソはいう。強くて
優れたものをチームで作り上げるには、まず一つひとつのウソを破
壊することだ。
そのためには、わずかな事例だけにしか通用しない「ホント」が、
あらゆる事例に当てはめられるうちに「ウソ」になってしまったこ
とを暴き、その陰に隠れた普遍的な真実を明らかにするべきだ。
★
ウソが定着したのは、組織の管理欲求を満たすためだ。大企業は複
雑だ。だから、リーダーは強力で自然な本能として、単純さと秩序
を求めるのだ。
特に「自分たちは目標に向かって前進しているのだ」と、自分や利
害関係者を納得させる必要がある。だが、単純さを求める気持ちは、
やがて同調を求める気持ちに変わる。
この同調圧力が、個性を押しつぶすようになる。いつしか個人の才
能や関心は、組織にとって不都合なものと見なされる。そして、人
材は、交換可能な部品として扱われるようになるのだ。
★
ある会社で働くことがどういうことかを、外から判断するのは難し
い。実際に会社に入った人が、どれだけ真剣に働くか、どれだけ長
く会社にとどまるかを左右するのは、もっと小さなことだ。
たとえば「仕事がどう割り当てられるか」「上司はえこひいきしな
いか」「昇進はどう決まるか」「成果は認めてもらえるか」など、
地に足の着いたことにこそ、皆んな関心をもっているのだ。
チームメンバーが全力を尽くし、彼らを長くチームにとどめるには、
こうした詳細のうちのどれに一番力を入れて取り組むべきか?それ
さえわかれば最善を尽くすのにと考えるかも知れない。
そのために暴かねばならない最初のウソは「どの会社で働くかが大
事」というものだ。これをウソと呼ぶのは違和感があるかも知れな
い。どんな人も自分の働く会社には思い入れを持っているからだ。
だが、社員一人ひとりにとって本当に大事なものは、会社などでは
ない。もちろん、最初は「会社」として始まるかもしれない。だが、
すぐにまったく別のものに変わるのだ。
それは、実際に一緒に働く仲間だ。具体的には、総勢15人ほどのチ
ームや一緒にランチを食べる3人程度のサブチームだ。これらのチ
ームメンバーのモチベーションを上げ、生産性を高めることだ。
これができて、はじめてメンバーに全力を尽くし、長くチームに留
まるようになる。その結果、高業績を実現するチームを作ることが
できるのだ。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)