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【Vol.334】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「要請と命令と罰則の関係」  7月7日に朝日新聞の取材に応じた西村康稔大臣は、その中で「休業要請 を拒否した事業者に罰則を検討している」と発言しており、これがネットで 波紋を呼んでいるようです。  具体的には「休業要請に応じない事業者に対して罰則規定を設ける法改正 を検討していく」ということで、すでに内閣法制局とも議論しているそうで す。  ネットでの議論は、 ・「要請」というのは「お願いベース」なのに、「従わないと罰則」という のはおかしい。 ・そもそも今回のは「自粛」であり、「要請」すらなかった。 ・お願いされた事を拒否したら罰を受けるというのは「日本語がおかしい」  というような曖昧な議論になっています。ですが、今回の西村大臣の問題 提起はそうした曖昧な話ではありません。具体的には2つあります。 1)自粛や要請といった「柔軟で強制力のない」指示ではなく、罰則規定の ある、従って強制力のある「命令」を出したい。 2)強制力ある命令を出したら休業補償が必要というバーターの認識を断ち 切って、補償無しで営業禁止に踏み切る。  ということです。ですから、日本語の問題ではなく政策の問題です。  一方で、問題となっている新宿のホストクラブなどについては、小池知事 は50万円の休業補償を打ち出しており、まるで西村大臣の政策と噛み合い ません。こちらの問題については、もう少し厳密な批判が必要です。 ・小池知事の立ち位置は風俗営業にも理解があって、強い休業要請イコール 補償という立場だが、政府はもっと「お堅い」姿勢なのでそうではないのか? ・東京の世論は風俗営業への補償を許すが、地方も含めた全国世論を背景と した政府としては出せないのか? ・そもそも政府としては、これを機会に「欧米型の私権制限」へ行きたいの か?  といった議論が必要と思います。尚、欧米型の私権制限というのは、私権 を制限できるような強い権限を間接民主制を通じて委任できる体制を指しま す。日本の場合は、そこまでの委任はしたくないという世論が強い中で、政 府としては難しい立場ですが、そう考えると西村大臣としては、今回の発言 で世論に向けてアドバルーンを上げた格好なのかもしれません。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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