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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第389号2020.7.14配信分
●「誰が座って良いと言った!」トヨタの重役が浴びた罵声
かつて聞いた実話。トヨタ自動車の重役(たしか技術担当専務)がある日運
輸省(当時)に呼ばれた。1980年代のことだったか。許認可権を握る中央官庁
の課長クラスといえば40代前後だったろう。当然国家公務員上級試験をクリア
したキャリア組であり、それなりの経験を積んでいる。
執務デスクに座るお役人氏を前にトヨタ重役氏は挨拶もそこそこに対面する
位置にあった椅子に腰を掛けたそうだ。すると「誰が座っていいと言った?」
自分の息子ほどの年頃が憤然と怒気を孕んで一喝したという。驚いた重役氏、
飛び跳ねるように起立したそうだ。何でも許認可に関係することで不手際があ
り、若手官僚の担当課長殿が叱責を浴びたということだった。所轄官庁と民間
企業の力関係を物語る『法治国家』たる日本の現実ということなのだろう。
重役氏は無駄に逆らうことを避け、平身低頭でその場を収めて早々に辞した
そうだ。そして帰社して「何であんな小僧にこの俺がペコペコしなくちゃいけ
ねぇんだ!」自らのデスク上にある一切を払いのけながら吼えたという。魂か
らの雄叫びだったと、側近が蒼くなってその場の様子を伝えた。
すべては伝聞なので本当のところは分からない。しかし多分事実だったに違
いない。日本の自動車産業は、戦後一貫して所轄の運輸省や通産省など官僚主
導による国家の庇護の下で育成されてきた。敗戦直後は民生用自動車の開発は
もちろん企画することさえ占領下のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に
よって許可されなかった(乗用車は全面禁止、トラックに限って1500台/月が
許可された)。
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