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第121回 ヘルス・パスポートとブロックチェーン その1
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▼今回の記事
今回は、いま経済活動再開の切り札として見られている「ヘルス・パスポート」におけるブロックチェーン適用の概要を紹介する。その1である。
▼拡大を続ける新型コロナウイルスのパンデミック
6月には一時期収束する傾向も出て来た新型コロナウイルスの世界的なパンデミックは、6月末から再度拡大し、いまでは最悪だった4月の水準を越えるペースで感染者数が増えている。
この再拡大の背景になっているのは、各国の経済活動の再開だ。明らかに再開は早すぎたようで、早期の再開に踏み切った国や地域ほど、速いペースで感染が拡大している。
●日本の実行再生産数
もちろんこれは日本も例外ではない。首都圏や関西圏で感染者数は拡大しており、収束のメドはまったくたっていない。感染拡大のペースを示す指標の一つは、一人の感染者が感染させる人数を表す実行再生産数だ。日本と東京都のそれは以下のようになっている。実行再生産数は日々変動する。これは7月19日現在の数値だ。
実効再生産数
全国:1.46
東京都:1.28
このような状況になっている。実行再生産数が1を越ると、感染が拡大していることを表している。ただ、日本と東京のこの数値が高いのか低いのかよく分からない。そこで、いま拡大が続いているアメリカの州の実行再生産数と比較して見ることにした。以下がもっとも感染者数が増加している州の実行再生産数だ。
テキサス州
実行再生産数:1.04
18日に増加した感染者数:2202人
アリゾナ州」
実行再生産数:1.08
18日に増加した感染者数:2539人
カリフォルニア州
実行再生産数:1.04
18日に増加した感染者数:7545人
フロリダ州
実行再生産数:1.03
18日に増加した感染者数:12748人
これを見るとちょっと目を疑いたくなるかも知れないが、日本や東京都の実行再生産数よりもかなり低い。日本全国の1.46、東京都の1.28という数値がいかに高いかが分かる。欧米では日本を含めたアジア圏よりも相対的に重症化率がかなり高いので、医療崩壊が起こる可能性がある。この逼迫した医療現場のニュースが報じられているので、米国内では大変な勢いで感染拡大が続いているとの印象が強い。
一方日本では、無症状か軽症の感染者の割合が多く、重症化率は低いので、医療崩壊の懸念はいまのところは低い。そのため感染拡大に対する危機感は比較的に薄い。しかし、一概には言えないが、実行再生産数だけを見ると、日本や東京都の拡大ペースは前掲のアメリカの諸州を上回っている。日本の拡大ペースはかなり速いと見て間違いないだろう。これからも感染拡大は続く。収束の目処は見えないのが現状だ。
●経済活動再開の条件、実行再生産数0.45
しかし、再度緊急事態宣言などの強い行動規制要請を宣言し、経済活動を制限すると、その影響はあまりに大きい。よほどのことがない限り、簡単にはできない処置だ。国民も政府も、経済活動は継続しなければならないとの見方が強い。
そうしたときに問題となるのは、経済活動を再開しても感染が拡大しない実行再生産数はどのくらいなのかという議論だ。もしこの基準値がはっきりするならば、この数値を実現できるまで行動規制を続け、数値が達成されると経済活動再開のペースを速めるというメリハリの効いた処置を講じることができる。
これは感染拡大と経済活動がバランスする数値だ。ドイツの研究機関などのモデルよると、この数値は0.45になるという。このレベルまで実行再生産数を低下させることができれば、経済活動の規制を大幅に緩和しても、感染は拡大しないとしている。
●切り札となる「ヘルス・パスポート」
では、0.45の実行再生産数を実現するためにはどうしたらよいのか。その一つの切り札と考えられているのが、ブロックチェーンを使った「ヘルス・パスポート」の発行である。
もともとこれは、抗体があり新型コロナウイルスの免疫のある人達に交付し、これを保持している人々には行動規制を緩和して、積極的に働いてもらうというコンセプトだった。しかし、最近の研究では新型コロナウイルスの抗体の持続期間はかなり短く、再感染の可能性が大きいことが分かった。中国、武漢などでも再感染した患者のケースが多数報告されている。そうした状況であるなら、抗体の保有を公的に証明するために発行される「ヘルス・パスポート」の意味はなくなる。
●健康状態を証明する「ヘルス・パスポート」
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