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【Vol.335】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「コロナと政治」(読者の質問への回答から) コロナと政治の問題というのは、本当に困った問題です。6月上旬までの 日本は、「政治は信頼されていないが、危機は回避できている」という「奇 跡の国」だなどと言われてきましたが、ここへ来て政治の弱さが大きな問題 になってきているわけです。何が問題なのでしょうか?  1つ目は、依然としてデータがいい加減だということです。検査数におけ る陽性率、新規入院数といった本質的なデータではなく、感染数だけで一喜 一憂する中で、政府として状況の評価ができなくなっているのです。  2つ目は、専門家の知見を活用せず、また専門家を守ろうとしないことで す。  3つ目は、経済危機の深度を評価せずに小手先の対応で済ませているとい うことです。  どうして、こうした問題が生じるのか、それは政治の弱さという問題がそ こにあります。  現代の日本の政治においては、内閣総理大臣というのは特殊なポジション になってしまっています。 ・閣僚までは官僚の作文読み上げで許されるが、総理は「自分の言葉」で話 すことが要求される。 ・従って、総理としては理念と政策の隅々まで理解して話すことが求められ るし、それができない場合は、閣僚、官僚、専門家に振るしかない。 ・一方で、頭脳明晰で知性を感じさせる人物は、よほど高度なコミュニケー ションスキルがない限り、大衆が嫌悪するので総理のポジションは務まらな い。 ・よほどのリーダーシップがなければ、各省庁が積み上げてきた政策提案を 拒めないし、また省庁ごとの矛盾にも手を付けられない。 ・地方の都市政党が「小さな政府論」や「右派ポピュリズム」で攻勢に出て くるので、その攻撃も適当にかわしながら、そのパワーを取り込むようにし ないと、政権が維持できない。 ・アジアにおける唯一のマトモな民主国として、外交面での責任は増してお り、個人の信用での首脳外交ができないと総理は務まらない。  本当はこれではダメなのですが、とにかく安倍政権という「時代の申し 子」が非常に複雑な権力維持をやってきたことで、内閣総理大臣職というの は、本当に「難しいポジション」になっているのです。  コロナ対応について、最善手が打てないというのは、そこに問題があると 思います。では、公選制などを導入して、総理大臣権限を強化すれば問題の 解決になるかと言うと、これも難しいでしょう。公選で権力を付与しても、 王様である世論が気に入らなければ、即座に権力は剥奪されるわけで、例え ば韓国で起きたようなことは日本でも起きると思います。それ以前の問題と して、小池、橋下といった政治家に対する世論の「実に半身な信任の仕方」 を見ていれば、それは分かることです。

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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