週刊 Life is Beautiful ２０２０年７月２８日号

今週のざっくばらん スウェーデンの新型コロナ対策 先週、スウェーデンの新型コロナ対策について、いくつか興味深い記事を目にしました。 New York Times の「Sweden Has Become the World’s Cautionary Tale（７月７日）」という記事は、スウェーデンの（ロックダウンを避けた）政策は、多くの死者を生み出したわりに、経済へのダメージを避けることが出来ていないと、非常に否定的です。 この記事によると、スウェーデンでは新型コロナウィルスによる死者が、5,420人に達し、これは人口比で言えば米国よりも４０％も多く、北欧の他の国と比べると６〜１２倍だそうです。 経済の方は、ロックダウンをしなかったにも関わらず、今年は4.5%のマイナス成長になると予想されているし、失業率も３月の7.1%から9.0%に上昇しているそうです。 この記事だけを読むと、「スウェーデンの戦略は失敗だったのか」と思ってしまいますが、それとは正反対に、スウェーデンの政策を讃えている記事が FEE の「Why Sweden Succeeded in “Flattening the Curve” and New York Failed（７月１５日）」という記事です。 この記事は、上の New York Times の記事を紹介した上で、実際にはスウェーデンは「２０２０年の第一四半期に経済を成長させた、ヨーロッパの中で数少ない国の一つだ」と讃えています。 さらに、死亡者数に関しても、北欧諸国の中では際立って高いものの、ベルギー、英国、イタリア、スペインと比べれば決して高くないと述べています。 中でも興味深いのが、ロックダウンを行ったベルギーとの比較です（下のグラフ、人口比で正規化してあります）。 ロックダウンを行わなかったスウェーデンの方がピークを抑えることに成功しています。 こんなデータを元に、この記事は、New York Times のように「スウェーデンの戦略は失敗だった」と決めつけることは間違いであり、逆にスウェーデンのように「ロックダウンを行わない」戦略を評価すべきだと結論づけています。 さらに興味深いのが「Stockholm can have 40 percent immunity（７月１６日）」という記事で、ストックホルムの人口の２０％弱がすでに（新型コロナに特化した）抗体を持っており、（抗体を使わず）自然免疫の力で新型コロナウィルスを撃退する力を持った人を合わせれば、すでに４０％の人が免疫力を持っていると指摘してます。 私が二ヶ月ほど前にしたシミュレーションによれば、４０％の人が免疫力を持ててば、パンデミックは収まるので、スウェーデンは既に集団免疫を確保したと言えるのです。 そんな中で、政治家や官僚の人たちに是非とも読んでいただきたいのが「Sweden’s Covid expert, who has advised against lockdown, says strategy widely misunderstood（６月３０日）」という記事です。