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【死んでも書きたい話】 「放置しろ」の暗号を仕込む

安田純平の死んでも書きたい話
今回は日記の2015年12月6日から8日までです。 よろしくお願いいたします。 【2015年12月6日(日曜日)】=拘束162日目 自称イエメン人アブドゥルぽいドカドカいう足音が夜中響く。台所方向から聞いたことないカタ、カタという音が不定期に聞こえる。何か取り付けた?新たな監視カメラ? 今回の救出失敗は、アハラル・シャムと合流できたらとか、ここ制圧できたら奴ら捕まえて荷物取り返し、金も取るとか、シャリーア法廷(イスラム法廷)に突き出してハラームであると裁いてもらうとか妄想ばかりしていたが、その過程を準備していなかったということ。どうせできるわけないとか諦めていたのだろう。ボールか何かがこちらの庭に落ちたのを取りに来た少年が窓の外を通った時のようなのがあるかもと渡す紙を用意していたが、いつのまにその意識も失っていた。 こんなことできるかも、ということばかり考えるが、実際どうやるかの段階で、どうせ無理、とか考えて十分用意せず挑戦もせず諦めたことがどれだけあったか。人に話して「そんなのできるの」と呆れられて諦めるという人のせいにしてやらない、人が無反応だからそのせいにしてやらない、ということも多々あった。そうやって、どうやるかを考えないで半ば諦めてしまう癖が出て十分用意していなかったのが原因。人生のツケが人生最大の危機で現れるということだ。 イラク出稼ぎ、2012年のシリアも、とにかくやってみせる、人は無理と言うけどオレなりのやり方でやってやる、と取りくんだときは思いもよらぬ成果があったりもした。その過程こそが大事で楽しいのだが、同時に苦しいもの。怠惰に走って諦めてしまう。今回もテレビに走ったりツケ。今の状態でニュースや映画を見てどう感じ考えるかも今の状態の貴重な記録だと思っていたが、もっと大事なことがあった。奴らの無意識の勝利。 人が難しいという時こそ、そこを克服すれば先が見える。難しいと思ったらさらに考える、ということを日常でやってなかったツケ。本当にそれを払うのはまだ先か。今の苦しみだけでなく身代金か。まだまだ苦しむのか。一生のツケは一生で払うのか。 この先は完全に他力本願。外務省は情報収集メインでやり取りしているのだろうが、払わないと通告するとしたら死刑宣告のようなもので、公務とはいえ人としてつらい作業ではあるだろう。オレに対しては「マヌケが」と思ってはいても、そこは素直に感謝したい。

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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