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週刊 Life is Beautiful 2020年8月11日号、Microsoft による TikTok 買収など

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん Microsoft による TikTok 買収 ここ2週間ほど、TikTok がメディアを賑わせています。TikTok は中国初の動画共有サービスです。音楽に合わせてダンスを踊る映像などを共有するアプリで、全世界に8億人のアクティブ・ユーザーがいると言われています。私自身も、2000年代の終わり頃に PhotoShare という写真共有サービスを提供していたことがあるので、とても親近感を感じるサービスです。 米国にも8千万人のアクティブ・ユーザーがいるそうですが、最近、やたらと中国を目の敵にしているトランプ大統領が、「TikTok のような中国企業が運営するサービスを米国で運営されると、個人情報が中国共産党に筒抜けになる」という発言が発端となって、一連のイベントが起こりました。 最初は、「Microsoft が TikTok との買収交渉をしているらしい」という報道でしたが、この時点では「噂」でしかありませんでした。私から見れば、せっかくエンタープライズ・ビジネス向けの SaaS ビジネスへの転換に成功しつつある Microsoft にとって、TikTok の買収は、戦略的に意味がないし、やるべきではないと感じていました。 しかし、8月1日に Reuters が「TikTok's Chinese owner offers to forego stake to clinch U.S. deal」というスッパ抜き記事を書き、ここで一気に信憑性が増しました。この報道は、まずは Microsoft が米国内の TikTok ユーザーのデータ管理をすることにより、米国政府の懸念を払拭し、その後に売却先を探すというトーンで書かれています。 Under ByteDance’s new proposal, Microsoft, which also owns professional social media network LinkedIn, will be in charge of protecting all of TikTok’s U.S. user data, the sources said. The plan allows for a U.S. company other than Microsoft to take over TikTok in the United States, the sources added. 翌日(8月2日)には、Microsoft から公式ブログを使って「Microsoft to continue discussions on potential TikTok purchase in the United States」との発表があり、そこには Microsoft が(TikTok の親会社である)ByteDance とだけでなく、米国政府ともこの件を話あっていると書かれています。 Reuters の記事とは異なり、Microsoft 自身が TikTok を買収するとブログには書いてありますが、「外部からも投資家を募る可能性がある(Microsoft may invite other American investors to participate on a minority basis in this purchase.)」と書いてあるので、Microsoft 本体に取り込むというよりは、別会社として運営する計画のようです。 それとほぼ平行して、トランプ大統領が、8月2日の記者会見で、TikTok に関して発言をしました(Trump calls TikTok a hot brand, demands a chunk of its sale price)。要約すると、Microsoft の CEO、Satya Nadella からこの件に関して連絡を受けたMicrosoft に限らず、米国の企業が運営するのであれば問題はない一部だけを買うのではなく、TikTok 全部を買収すべきだと思う(個人的意見)9月15日までに買収が成立しなければ、TikTok は停止させる買収は米国政府が関与しなければ成立しないので、その一部を米国政府に納めてもらう となります。特に最後の部分は、いかにもディール好きのトランプ大統領が思いつきそうな話で、このディールが成立すれば、トランプファンは大喜びし、大統領選にもプラスになると考えているのだと思います。 買収金額に関しては、通常の状況であれば米国のオペレーションだけで $20 〜$40 billion (2千〜4千億円)の値段がついても不思議はありませんが、「9月15日までに売却しなければならない」という厳しい条件がある上に、Facebook、Google、Apple は独禁法の観点から買収先として相応しくないため、Microsoft 側は圧倒的に有利な条件で交渉を進めることが可能です。 私が予想するに、これは Microsoft にとって戦略的な買収ではなく、買収後も独立した会社として運営し、1〜2年以内に、売却もしくは上場させるという、キャピタルゲイン狙いの買収でしかないと思います。そう考えれば、出来るだけ安く買い叩いた方が良いし、「キャピタルゲインを得た後に、その一部を渡す」という形でリスクを減らすことさえ可能です。(具体的には、「$5 billion で買収し、2年以内にキャピタルゲインを得た場合には、そのゲインの30%を渡す」などの契約です)。 Microsoft は以前にも、戦略的ではないサービスとして Expedia を別会社として切り離して上場させたことがあるので、TikTok に関しても同じようなことをする可能性が大きいと私は思います。 ちなみに、買収後に TikTok のサービスを Microsoft Azure 上のサーバーに乗り換えておくことは当然やると思います。エンタープライズ向けのクラウドサービスでは健闘をしている Microsoft ですが、コンシューマー向けでは Amazon に大きく離されています。TikTok の規模のサービスを Azure で運営することは、実績としても重要だし、別会社として切り離した際には、重要な顧客になってもらえます。 Appleの決算 Appleが第二四半期の決算を発表しましたが、新型コロナの影響にも関わらず、大方の予想を上回る結果だったため、株価が急騰しました。

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