メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

【Vol.338】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「再選に黄信号が点灯、どうするトランプ?」  トランプ再選に黄信号が点ったのは事実と思います。  支持率が42%前後で低迷している一方で、民主党のバイデン候補は49 %前後の支持を集めているからです。  そんな中、トランプ陣営の選挙運動も上手く行っていません。まず、大統 領はフロリダ州で予定されていた「リアル」な共和党大会の中止に追い込ま れました。(その代わりに指名受諾演説を、ホワイトハウスもしくはゲティ スバーグで行うという意向のようですが)また、共和党のマコーネル上院院 内総務は11月に改選される議員に対して「(今回の選挙では)自分の議席 を優先しトランプ支持にはこだわるな」という衝撃的なメッセージを出した と報じられています。更に共和党内では「トランプ落選後の党体勢」に対す る議論も始まっているという始末です。  ただ、これに対してトランプ大統領は「大逆転」を狙っているようです。  具体的には5点指摘ができます。  1点目は、人種問題に関するデモが暴徒化して世論が「秩序」を志向する という可能性です。武装公務員を投入して暴力を挑発する姿勢を取っていた のはこのためですが、シアトルの解放区は終了、また、ポートランドの武装 職員とデモ隊の対決も沈静化しており、トランプの目論見は外れつつありま す。  2点目は投票日までにワクチンが完成するなど、パンデミック鎮静化の兆 候が出て株の暴落が回避できた場合です。トランプ自身は相当にこれに賭け ている(怪しいインサイダー投資も含めて)ようですが、これも可能性は低 いと思われます。  3点目としては中国との対立を激化させて、バイデン氏を中国寄りだと批 判する作戦で、恐らく中南海とある程度は裏で「示し合わせている」のだと 思います。現在、尖閣で起きていることなどはその一端とみなすことができ ますが、これもそれほど派手な動きにはならないと思います。諜報機関も軍 も、今は、トランプ再選に賭ける動機はないからです。  4点目はバイデン氏の健康問題です。バイデン氏はTV討論への対応に不 安があるわけですが、もしかすると老獪なトークで乗り切ってしまうかもし れません。また、本稿には間に合わなかったのですが、強力な副大統領候補 を選任できれば、その人物の力で選挙戦を乗り切ることはできそうです。  そんな中で囁かれているのが、最高裁のリベラル派ギンスバーグ判事が健 康問題で辞任するというシナリオです。実際に、彼女の健康は相当に厳しそ うなのですが、仮にそうなれば、超保守派判事を送り込むプロセスで議会共 和党との団結が回復する可能性も出てきます。この5番目のシナリオは、大 統領選の結果を左右するワイルドカードと言えるでしょうし、注目していか ねばなりません。  というわけで、トランプの現状は非常に厳しいですが、まだ勝敗の行方は 100%決まったわけではないと思います。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
  • 880円 / 月(税込)
  • 毎月 第1火曜日・第2火曜日・第3火曜日・第4火曜日