■真の「働き方改革」
「残業はしないで、成果は上げろ」このようなプレッシャーにさら
されているビジネスパーソンが増えている。背景にあるのは「労働
時間の削減」を目指す企業が増えていることだ。
「働く時間」を制限すると同時に、成果を上げることに対する圧力
も高まっているのだ。企業が生き残るには、常に成長し続けること
が求められているからだ。
とりわけ、そのプレッシャーはマネージャー層にのしかかっている。
それを部下たちに感情的に伝える。それが「残業はしないで、成果
は上げろ」の正体だ。部下からすれば「無理」となるかも知れない。
上司は「残業せずに、成果は上げる」ために、どうすればいいかを
教えない。なぜなら、上司もその方法がわからないからだ。だから
「自分の頭で考えてやれ」となるのだ。
★
「働き方の改善」は、単に「働く時間を短くすること」ではない。
ムダな時間を削り、そこで生み出された時間を正しく再配置するこ
とで成果を上げることだ。
まず、効率化すべき定型業務を棚卸しして、それにかける労働時間
を圧縮することだ。業務の棚卸しのためには「自分は何に時間を費
やしたのか」を可視化する必要がある。
そもそも「何に時間を使い、どんな成果が出たのか」を可視化して
把握しないと、何がムダなのかわからない。ダイエットと同じだ。
毎日体重計に乗る人は、ダイエットの成功率が3倍になるという。
仕事でも、まず現在の業務を把握する。そのためには「振り返り」
だ。これが、いわば体重計に乗る行為だ。毎日である必要はない。
週15分だけでも振り返れば、効果が出てくるはずだ。
そして「効率化すべき業務」すなわち「ムダな部分」を見つける。
これがいわば「業務の脂肪」だ。その上で、ムダな仕事にかけてい
る時間をダイエットしていくわけだ。
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ダイエットでは、ぜい肉を減らすが、筋肉は減らすべきではない。
仕事も同じで「生産性の高い業務」を減らすべきではない。さらに
その先が重要だ。「成長」だ。
企業も働き手も成長が必要なのだ。「働く時間」でいうと、稼働時
間を短くすることは、あくまでもファーストステップだ。大事なこ
とは、その浮いた時間を企業や社員の成長に役立てることだ。
まず、ステップ1として、既存のビジネスにかけている時間の中で、
利益に大きく貢献しながら効率化できない「コア業務」と、効率化
できる「定型業務」を「棚卸し」する。
次に、ステップ2として、定型業務をITやアウトソースなどで、
徹底的に「圧縮」する。ここでは「止める業務を決めること」が最
も効果が高い。
その上で、成果につながり、しかも人間にしかできない業務にかけ
る時間を「拡大」する。これがステップ3だ。多くの企業は、ここ
で改善を終えてしまう。だが、これでは不十分なのだ。
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本質的な価値を生むには、生まれた時間を未来に必要な時間に再配
置することだ。未来に必要な時間とは、新たな「ビジネスの開発」
と「スキル習得」だ。この2つが利益の向上に貢献するのだ。
新規ビジネスは純利益を生む。また、企業も個人もスキルが身につ
けば成長につながる。労働時間の削減と利益の向上の両方を実現す
る真の改善には、このステップ4が不可欠なのだ。
「労働時間削減」というネガティブな発想でなく「未来に必要な時
間を捻出するための時間短縮」というポジティブな発想が必要だ。
これができれば「ムダ」を削って重要なことに集中できる。
時間をダイエットすれば時間あたりの生産性は上がる。だが、それ
だけでは成長できない。生まれた時間を未来の投資に使うことで、
はじめて「事業生産性」の向上ができるのだ。
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