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週刊 Life is Beautiful 2020年8月25日号、コロナ後の世界:激しい進化圧に晒される小売業界、新しい形の飲食業

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん コロナ後の世界:激しい進化圧に晒される小売業界 新型コロナ対策のロックダウンおよびそれに伴う人々のライフスタイルの変化により、米国では大量の失業者が生まれ、GDPは大幅に下がり、数多くの企業が倒産していますが、それにも関わらず、株価が順調に復活しています。 その理由の一つは、連邦政府がなりふり構わずばらまいているお金で、それにより行き先を失ったお金が株式市場に流れ込むという「資産バブル」が起こっているのです。 しかし、個別の企業を見ると結果は様々です。GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に代表されるIT企業の多くは、新型コロナの影響をほとんど受けず(もしくは逆に売り上げを上げ)、業界としては一人勝ちの状況なのは、誰もが予想した通りです。 興味深いのは、小売業界です。JC Penny(デパート)、Papyrus(グリーティング・カード)、Pier 1 Import (輸入品)、J Crew(婦人服)、Neiman Marcus(デパート)、Brooks Brothers(紳士服)、Sur la table(キッチン用品)、Ann Taylor(婦人服)、Men's Wearhouse(紳士服)などが、次々にChapter 11(日本の会社更生法・民事再生法の適用に相当するもの)を申請する一方で、Amazon、Walmart、Costco は順調に売り上げを伸ばしているのです。 Amazon が順調なのは当然として、Walmart と Costco が順調なのは直感に反しますが、彼らは、寝具、キッチン用品、洋服、スポーツ用具、文具などの一般的な小売商品に加えて、(生活必需品である)食料品も販売していたため、州政府がロックダウンを宣言していた間も、営業を続けることが出来たのです。 さらに彼らは、「対 Amazon」で準備を進めていたオンライン販売にさらに力を入れ、オンライン販売に出遅れる他の小売店舗から客を奪うことに成功したのです。 下のグラフは、Wallmart(WMT)とCostco(COST)の過去12ヶ月間の株価の推移ですが、3月に一度株価が落ち込んだものの、その後回復して、今では去年末よりも株価が高くなっています。 これだけを見ても、小売業界が「勝ち組」と「負け組」に別れてしまったことが良くわかりますが、こんな形で業績が可視化されるのは大手の企業だけで、水面下では、大量の小さな小売ビジネスが、存続の危機に晒されています。 特に厳しいのは、蓄えを持たない個人商店で、すでに店を閉じてしまったところも沢山あるし、かろうじて連邦政府からの救済金で生き延びているものの、それが途絶えたらすぐに倒産してしまう店が大半だと思います。 つまり、Amazon、Walmart、Costco の躍進は、ロックダウンによって淘汰されてしまった(もしくは淘汰されつつある)中小の小売店から客を奪う形で成立しているのです。 この状況がもっと極端なのは飲食業です。McDonald (MCD)、Domino's Pizza(DPZ)、Chipotle Mexican Grill(CMG)などが、注文のオンライン化やデリバリー(配達)で順調な回復をしているのに対し、IT投資など出来ない中小のレストランが、軒並み倒産の危機にさらされているのです。 ちなみに、デリバリーで成功しているところは、どこも自社で配達員を抱える余裕があるチェーン店で(良い例が Domino's Pizza)、Uber Eats などの外部のデリバリー・サービスに頼っている小さなレストランは、その高い手数料(15〜30%)のために利益を上げることが出来ていません。 つまり、新型コロナは、猛烈な進化圧を小売業界・飲食業界に与えており、結果として「IT投資をする余裕がある大手企業」だけが生き残り、そうでない個人商店やオーナーシェフ・レストランが淘汰されてしまう、という結果になりつつあります。 結果として世の中から多様性が失われ、チェーン店ばかりになってしまうのはとても悲しいことです。私が OwnPlate (おもちかえり.com)というサービスをオープン・ソースで始めたのは、そんな自体を避けるためでしたが、これだけでは不十分なのかも知れないと最近は感じています。 そのためには、個人経営の飲食店でも、ちゃんと最新のITの恩恵を受けることが出来る仕組みを、根本から作る必要があるのかも知れません。少しづつ頭の中にアイデアが生まれつつあるので、次に少し書いてみます。

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