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【Vol.344】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「ドコモ口座事件を考える」  ドコモ口座の事件ですが、まず、影響としてあるのは「地銀再編」との関 連性です。フィンテック(ファイナンスの電子化)が世界規模で進められて いる中で、地銀を中心とした日本の金融機関に、このようなセキュリティ・ ホールが「ぽっかり」空いていたというのは、やはり衝撃です。これは、直 接間接の影響として、日本の金融システムへの信認が崩れていく流れを速め ることと思います。  中でも心配なのは地銀です。私が前世紀に、それも昭和の時代に世話にな った某地銀さんも今回の事件で引っかかっていますが、とにかくその地銀さ んの場合は、「石橋を叩いても渡らない」という堅実経営で知られていたも のでした。多くの地銀の雄は、例えばバブル期にもバブルの饗宴に踊って破 滅した公債銀などとは違って、堅実に体力を維持していたのです。  ですが、今は違います。本格的な地方経済の衰退の前に、多くの地銀は風 前の灯です。ようやく独禁法が整理されたので合併で延命が可能となったわ けですが、例えば菅総理が竹中平蔵氏の助言でそれを進めているという話に なると、地方からは「暴虐だ」とか「新自由主義だ」などと罵声が飛ぶわけ です。  そんなことを言っても、地銀の体力は本当に残っていないし、コロナによ る危機で本当に心臓が止まってしまう危険もあるわけです。そんな中で、今 回のドコモ口座問題は、地銀の延命に止めを刺す、一つの要素になると思っ ています。  ロクな貸し方をしていない地銀が潰れ、ロクな借り方をしていない地方企 業が潰れ、実態のない価値評価のある地方のシャッター通りの地価が暴落す るのは、ある意味では自然かもしれません。ですが、非連続的な変化に耐え るだけの体力を、地方社会はもう残していない中では、とにかく誰かが改革 の旗を振る必要があります。菅政権が、ボロボロになってもそれを完遂する こと、その上で、地方の全てが死ぬのではなく、新しい再生ができるように すること、それを祈るのみです。  もう1つは、これでオンラインバンキングが進むということです。通帳記 載をしては、「良かった被害に遭っていない」と確認するというような大変 な手間をかけるのではなく、一日2回ぐらい、オンラインで口座の確認に行 く、そうした行動パターンは、今回の事件で拡大してゆくだろうし、その中 で、認証のしっかりした銀行に、結局は預金者は動いていくのだと思います。 冷厳な事実で、その方向でどんどん業界は淘汰と変化が進むのだと思います。 それでいいし、そうなるべきです。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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