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第135回 教育産業で発展するブロックチェーン その1
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▼今回の記事
今回も2年半前の記事で一度紹介したことのある分野を再度取り上げる。教育産業におけるブロックチェーンの導入だ。過去2年間におけるこの分野の発展も著しいので、今回改めて紹介することにした。新しいプロジェクトが続々と立ち上がっている。
▼教育産業におけるブロックチェーン
まず最初に教育産業におけるブロックチェーン導入の概要を確認する。2年半前の記事と一部重複する内容があるが、ご了承願いたい。
教育の分野と聞くと教師と生徒との人間的な関係が基礎になるので、ブロックチェーンとは結び付かないようなイメージを持つかもしれないが、実はそうではない。
複数の分散台帳にブロック化したデータを書き込み、それらをリンクするブロックチェーンの技術は、教育分野に革命的な変化をもたらす大きな力を発揮すると見られている。それらは、次のような方面での適用が考えられているか、すでに実現している。
1)教育記録のブロックチェーン化
教育産業にブロックチェーンを導入すると、個人が受けたすべての教育の履歴をブロックチェーンに記録することができる。すると、個人が就職や転職の際に卒業証明書をいちいち提出する必要性がなくなる。学校や企業がその個人の教育履歴を参照する必要はあれば、それを記録したブロックチェーンにアクセスすればよい。すると、信頼できる教育の履歴が手に入る。
またインターネットでは、偽造されたコースの修了証や学位、また大学や大学院の卒業証書などが数多く出回っている。徹底した学歴社会の欧米では、学歴の違いで年収に大きな差がある。そのため、日本以上に巧妙に偽造された証書が出回るケースが多い。
そのようなとき、一度分散台帳にブロック化したデータが書き込まれると、それをコピーも改ざんもできないブロックチェーンのテクノロジーで証書を管理すると、偽造が不可能に近い理想的な環境が構築できる。
これはすでにMITが実施している。また、ボストン大学、オランダのデルフト工科大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、オーストラリア国立大学、そしてカナダのブリティッシュコロンビア大学では、同じブロックチェーンを共有し、修了証と卒業証書のデジタル管理と発行を進めている。
さらに、すべての大学が使えるブロックチェーンのインフラを建設するための「デジタル証明書コンソーシアム(Digital Credentials Consortium)」という組織を設立され、教育分野におけるブロックチェーンの導入を加速させている。
この傾向は、新型コロナウイルスのパンデミックで一層加速しているようだ。新型コロナウイルスの蔓延で、大学をはじめ多くの学校ではオンラインで講座を提供する傾向が一気に強まっている。社会的行動規制が少し緩和されたいまでも、多くの大学はオンラインが一般的な授業形態になっている。
このような教育のオンライン化にともない、教育のあらゆる側面のデジタル化が加速度的に進みつつある。受けた教育記録のブロックチェーン化も、この動きの一環として進んでいる。
2)学習者と教育者の動機刺激
またブロックチェーンでは、これまで予想もしなかった方法で学習者と教育者の双方の動機を刺激することが可能になっている。
いま一部で問題になっているのが、人と対面しないオンライン教育の限界である。授業水準のクオリティーはこの形態でも保つことはできるものの、人との直接的な接触がない環境では、学習者も教育者も高いモーチベーションを維持するのは難しい状況におかれることが多い。やはり人との接触で相互に刺激しあえる環境があってこそ、高いモーチベーションは維持できる。もしオンライン授業の一般化でこうした環境が失われるのであれえば、それに代るモーチベーションの刺激がなくてはならない。
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