今回は、連載している学術読み物『王妃ペルシーナの視線』の第4回(第5節)として、神学者たちの見解をアウグスティヌスからトマス・アクィナスまで追いかけます。
第5節 神学者たち
前回までは、おもに古代ギリシア・ローマの哲学者や文学者、医学者たちの見解を紹介してきた。以下では、すこし目先を変えてキリスト教の神学者たちの考えを紹介したい。彼らにとっての議論の出発点は、これまでのギリシア・ローマ世界の人々にとっての典拠よりも、ずっと以前にさかのぼることになる。それはユダヤ教の聖典であり、キリスト教徒たちにも受けつがれた旧約聖書のなかでも、もっとも重要な出発点となる『創世記』に見出せる。
『創世記』には、イスラエルの民、つまりすべてのユダヤ人の祖先となったヤコブについての逸話がある。双子の兄の恨みをかったヤコブは、叔父であるラバンのところに身を隠すことになり、シリアの都市ハランに向かう。ハランで長い年月にわってラバンに仕え、ラバンの娘をめとる。そしてヤコブは息子ヨセフをもうけたときに、叔父のもとを去ることを決心し、それまでの労苦の報酬として財産を分与される。
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