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【Vol.349】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「菅総理の今後、狙いはキングメーカーか?」  菅政権の推移ですが、26日の施政方針演説やNHKインタビューを受け た印象としては、2050年エミッションのゼロ化であるとか、コロナ禍に おける経済の問題、特に地方経済に関する危機感とか、非常に手堅い印象を 受けました。少なくとも、インタビューを通じて、この人は問題の所在と、 その問題における政策的な意味と政治的意味を相当程度に理解しているとい う安心感があったのは事実です。  こうした安心感というのは、歴代の総理の中で、良くも悪くも橋本、小渕 総理以来ではないかと思います。以降の、森、小泉1、安倍、福田ジュニア、 麻生の方の太郎、鳩山由、カン、のだ、安倍再と並べてみると、とにかく政 策論の全領域について、把握してモノを言っていた人はゼロでしたから、こ の安心感は貴重です。  インタビューでも総理は「現在の政治では、やらねばならないことはだい たい決まっている」として、実行可能な政策の幅は狭いことを示しながら、 それをどう実行してゆくかが政治だという正論を吐いていました。  けれども、だからと言って菅総理が長期政権を安定的に維持してゆくかと いうと、政界の一寸先は闇であり、全く読めないのも事実です。  心配なのは2点で、1つは世論とのコミュニケーションです。10月26 日のNHKのインタビューでは、就任直後よりは自信も出てきて滑らかな話 ぶりでしたが、まだまだ技術的に上を目指さないと、「守旧派と対決するだ けの権力の委任」を世論からもらえるかは分かりません。  コミュニケーションについては、徹底的に極めてやろうという迫力を感じ ないし、低姿勢と高圧姿勢をミックスしてバランスを取るという粗っぽい姿 勢で「乗り切ろう」という感じが少々残念です。  もう1つは外交です。外交の持っている複雑性については、菅総理はちゃ んと理解できると思います。ですが、外交というのは内政とは異なります。 内政というのは、賛否両論の2つに対応すればいいのですが、外交というの は、それぞれに表と裏があり、場合によっては裏の裏まであります。その辺 についてのハンドリングには、一定の経験が必要です。  菅総理は、勿論、並の政治家よりはずっと素質があると思いますが、多少 心配な要素があるのは事実です。とにかく、外交については場数を踏むこと が大切で、今回のベトナム、インドネシア出張というのは、良かったのだと 思います。  一つ感じるのは、菅総理は71歳という年齢を考えると、自分自身が長期 政権を維持するということには固執しないかもしれないということです。狙 いは良い意味での院政、キングメーカーということで、自分が総理をやるの は、そのステップという可能性です。  例えば、現時点では、4名の有望な総理総裁候補を閣内に置いています。 梶原経産相には経済の立て直しを、小泉ジュニア環境相には保護しつつ懸案 の放水問題を処理させ、河野の方の太郎大臣には高度な行革を振り、茂木外 相には恐らくはバイデン?=ハリス?(=李克強??)の時代における日米 中の関係再構築を託すことに(恐らくは)なると思います。そうやって、実 務的な素質(1人はちょっと怪しいですが)のある政治家を競わせ、育てて キングメーカーになる、つまり今やっているのは「菅学校」という考え方で す。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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