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[高野孟のTHE JOURNAL:Vol.471]菅政権の「米中バランス外交」を警戒する右寄り陣営

高野孟のTHE JOURNAL
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 高野孟のTHE JOURNAL Vol.471 2020.11.9                  ※毎週月曜日発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 《目次》 【1】《INSIDER No.1072》    「自由で開かれたインド太平洋」は戦略? 構    想? 地域?ーー菅政権の「米中バランス外交」    を警戒する右寄り陣営   【2】《CONFAB No.471》閑中忙話(11月1日~7日) 【3】《FLASH No.381》    大阪都構想 菅首相の政権運営に後々まで響く    “維新の挫折”ーー日刊ゲンダイ11月5日付「永    田町の裏を読む」から転載 【4】《FLASH No.382》    見事な派閥の談合によって生まれた菅政権    ーーマスコミ市民11月号より転載 【5】《SHASIN No.415》付属写真館 ■■ INSIDER No.1072 2020/11/09 ■■■■■■■■ 「自由で開かれたインド太平洋」は戦略? 構想? 地 域?ーー菅政権の「米中バランス外交」を警戒する右寄 り陣営 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■  安倍晋三前首相を支えてきた親米反中的な勢力の中 で、菅義偉首相が中国との融和に傾くのではないかとい う“警戒感”が広がり始めている。それも当然で、菅は 9月12日に日本記者クラブで行われた総裁選ディベート で、石破茂の持論である「アジア版NATO」について、 ▼アジアで敵味方をつくってしまい、反中包囲網になら ざるを得ない。日本外交の目指す戦略的な外交の在り方 や国益に資するとの観点から正しくない。 ▼ASEAN諸国も参加できないのではないか。 ▼中国は隣国であり経済的にもわが国と関係が深い。世 界で米国と競う大国でもある。  と述べ、明確に「中国包囲網」への加担を否定した。 それに対して石破は、「中国やロシアを排しているわけ ではなく、自由や法の支配など価値観を共有する国々の ネットワークだ」と説明したが、その口ぶりは弁解調で 説得力に乏しかった。 ●「アジア版NATO」という幻覚  石破の言い方が不明瞭になる根本原因は、彼が安全保 障問題の専門家だと自認していながら、冷戦的な軍事同 盟と冷戦後的な集団安全保障機構との原理的な違いをよ く分かっていないことにあるのではないか。  NATOや日米安保などは、冷戦時代の遺物である「敵対 的軍事同盟」であり、すでに歴史的使命を終えてゴミ箱 入りにすべき代物である。その本質は、予め誰かを仮想 敵と設定し、その侵略の脅威に対抗するために出来るだ け多くの味方を結集して身構えることにあり、「集団的 自衛権」はこの旧タイプの同盟の属性である。  それに対して国連理念や欧州安保協力機構(OSCE)や アセアン地域フォーラム(ARF)などは、誰が誰を敵と するのでなく、該当地域に存在するすべての国が参加し てラウンドテーブルの席に着いて紛争を予防し、もし起 きてもとことん話し合いで解決しようとする、これから 創出すべき21世紀的な新タイプの安保で、これを普遍的 安全保障、共通安全保障、集団安全保障などと呼ぶ。  端的に言うと、前者は国際紛争を解決する手段として 「国権の発動としての戦争と武力による威嚇または武力 の行使」を用いるのは当たり前という立場であり、後者 はそれを当たり前としない立場である。この致命的な原 理の違いを理解しないと、すべての安保論議は茶番とな ってしまう。  今更アジアに、NATO型の、その本質において敵対的な 性格の軍事同盟を作るなど愚の骨頂どころか狂気の沙汰 であって、上記ARFをベースに、まずは東南アジアと北 東アジアを複眼として(台湾や北朝鮮を含む)すべての 国・地域が参加する「東アジア安保共同体」を作り上 げ、さらにそれに域外の豪州・ニュージーランドやイン ドなども加えた包括的な地域集団安全保障機構を構想す るのでなければならない。この冷戦終結の前と後の2つ の安保原理の違いを混濁したま「アジア版NATO」などと 口走るのは、まことによろしくない。

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