━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高野孟のTHE JOURNAL Vol.472 2020.11.16
※毎週月曜日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《目次》
【1】《INSIDER No.1073》
バイデンで米国は正気を取り戻せるのか?
ーー米大統領選の不明瞭な結果
【2】《CONFAB No.472》
閑中忙話(11月8日~14日)
【3】《BOOKRACK No.001》!
中国流「市民社会」の底力を垣間見るーー査瓊芳
『武漢支援日記/コロナと闘った68日の記録』
!書評欄は以前《BOOKWORM》としていましたが、長く
中断したので改題しナンバーを振りなおします。
【4】《FLASH No.383》
安倍前首相や周辺が問題視 後継者・菅首相の“2
つの裏切り”ーー日刊ゲンダイ11月12日付「永田
町の裏を読む」から転載
【5】《SHASIN No.416》付属写真館
■■ INSIDER No.1073 2020/11/16 ■■■■■■■■
バイデンで米国は正気を取り戻せるのか?
ーー米大統領選の不明瞭な結果
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
雨宮処凛の東京新聞11月11日付夕刊のコラム「米大統
領選と相模原事件」には驚愕した。相模原障害者施設で
19人を刺殺し26人に重軽傷を負わせて死刑判決を受けた
植松聖が、今年1月から3月まで続いた裁判の中で「ト
ランプ大統領の名前を何度も出した」のだという。
「立派な人」「見た目も生き方も内面もすべてカッコ
いい」。そんなトランプが前回大統領選の際、植松の心
を動かした。「これからは真実を言っていいんだと思い
ました。重度障害者を殺した方がいいと」。また、大統
領選が11月であることから、その後に自分が事件を起こ
すと「トランプみたいな人が大統領になったからこんな
事件が起きた、と言われるのでは」と思い、その前〔16
年7月〕に事件を起こしたとも述べた……。
●解き放たれた差別主義
トランプの登場とはまさにそういうことだったのであ
る。米国の著名な精神科医であるアラン・フランセスは
『アメリカは正気を取り戻せるか』(創元社、20年10月
刊/原著は17年刊)で述べている。
▼白人至上主義者、クー・クルックス・クラン、武装民
兵組織、ネオナチなどの過激なヘイト集団は、それまで
容赦なく非難されてきた彼らの偏見が、アメリカ大統領
によって主流に押し上げられ容認されたことに大喜びし
た。
▼だがこうしたレイシズムは、かなり社会的地位のある
多くの白人の心にも響いたのである。ますます人種の多
様化が進むアメリカで、彼らは白人の優位さが急速に失
われていることに脅威を覚え、快く思っていない。20世
紀前半のアメリカでは、90%が白人だった。現在白人の
全人口に対する割合は63%で、人口構成は大きく変わっ
ている。21世紀の中頃には、これまで白人が多いとされ
ていた場所でも、白人が少数派になるだろう。
▼「アメリカを再び偉大に」というスローガンから透け
て見えたのは、アメリカを再び白人の国にするというメ
ッセージだったのだ……。
狂気に満ちたトランプの暴力的言動は、それまで長い
間、いわゆる良識の壁に囲まれて社会の片隅で密やかに
生きるしかなかったレイシズムや女性差別、植松の障害
者抹殺論まで含めたあらゆる差別主義を解き放ってしま
った。とはいえ、トランプのことをクレイジーだと言っ
てしまえばそれで済むのか、とフランセスは問いかけ
る。それでは「われわれは社会に潜む狂気との対決を避
けることになる。正気でありたいと思うなら、まずわれ
われが自分自身を洞察しなければならない。簡単に言え
ば、トランプがクレイジーなのではなく、われわれの社
会がクレイジーなのだ」。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)