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【Vol.352】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「理解に苦しむ日本でのトランプ応援現象」  今回の大統領選挙報道に関わっていて驚いたのは、意外なことに日本国内 にトランプ応援団が増えたという事実です。例えば、前回の2016年に 「予想を当ててしまった」という経緯のある木村太郎氏はなどは、まあ一種 の必然があるのかもしれません。ですが、それ以外にも保守ポピュリスト的 な人が、かなりの数、トランプ支持に回っていたのはどうにも解せません。  百歩譲って政治的な立場として支持する、例えば「福祉反対、移民反対、 減税、非介入主義、保護主義」という特殊なパッケージを評価しているので あれば、まわ分からないではありません。ですが、一部には「リバタリア ン」を自称している人がトランプ支持者だったりという、全く意味不明な現 象があったりしたわけです。  それはともかく、ネット論壇を見渡して、トランプ応援の声が大きい理由 を見てみると、その中身として「中国に対して強硬だから」とか「アンチ・ エリートの姿勢に共感できる」といった気軽なものが多いのは気になります。  まず、トランプのアジア政策に関してですが、日本と強固な同盟を維持し て、中国とのパワーバランスを保って、日本の「安全を保障」してくれる、 そんな政策とは正反対です。まず、中国との通商交渉では思いつきの「ディ ール」に走る可能性が大であり、日本は無視されたり、切られたりする危険 があります。また、2015年から公約として掲げている「米軍駐留費を全 額払え、嫌なら出ていくが、その場合は核武装を許す」という「日韓へのメ ッセージ」は今でも有効で、これは日本の国家としての存立を危険に導く悪 魔の政策といっても過言ではありません。  またトランプの「アンチ・エリート」の態度に共感している向きも多いよ うですが、アメリカの場合は「本当に努力をして、世界観も獲得し、人類を 幸福にするために世界を変えてしまう」ようなグローバルなエリートがゴロ ゴロいるわけです。その成功が巨大であり、結果的に格差を伴うことから負 け犬はどうしても屈折する、そこをトランプは巧妙なマーケティングとバラ マキですくって行ったわけです。  ですが、日本の格差というのは、高い教育を受けても、生まれた年が「氷 河期」だとか、偶然上司が「メンヘラ転じてモラハラ大魔王」だったりして、 挫折に追い込まれた層だとか、素晴らしい発想と能力があっても「既得権 益」に弾かれた層など本人の責任ではない場合があるわけです。いや、その 方が多いかもしれません。また、欧米や中国に拝跪をして膨張してきただけ の東京圏と、その東京圏に人材も資金も吸い取られて危篤状態の地方がある わけで、この構造に関しては現在その被害者である一人ひとりには責任はあ りません。  ですから、問題は「エリート」とか「エスタブリッシュメント」あるいは 「東京」、さらに言えば「上の世代」の側にあるわけで、だからこそ屈折す るのではなく正々堂々と戦って社会を変革することへの大義もあるわけです。 簡単に言えば、日本の格差は機会の不平等など不正の結果であり、それ自体 が悪であるのですから、格差に反対する人がダークサイドに行く必要は絶無 なのです。そこを勘違いして、怠惰で無学無能なアメリカの負け犬に感情移 入するというのは、全くもって「ワケワカラン」としか言いようがありませ ん。(以下略)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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