「石川さん、吉川貴盛前・農林水産大臣を特捜部が狙っている、という情報が出ていますが、知っていますか?」
旧知の記者から連絡があったのが、11月26日だった。
すぐに私も、検察に強いジャーナリストとアングラ経済評論家に電話をして確認を取ったところ、「2週間前から出ていますがそろそろという感じですね」という回答だった。 12月1日に共同通信が第一報を出したことによって、本気で東京地検特捜部が動いていることが分かった。
吉川貴盛衆議院議員は当選6回で、菅総理と同期当選だ。 菅氏の側近として知られている。 現在は二階派の事務総長で、自民党選挙対策委員長代行という総選挙を仕切る要職を務めている。 しかも、この役職は二階幹事長の使者として、新たに設置されたポストだ。 いかに二階氏から信頼されているかが分かる。 また自民党北海道連会長として鈴木知事を誕生させるなど、いま、北海道において最も権力を持つ政治家だ。
そしてもう一つの顔は農林水産族としての顔だ。 吉川氏の選挙区(北海道2区)は札幌市内なのだが、北海道の歴代政治家で札幌市内を選挙区とした大物農林水産族の議員となった人物は、私の記憶にはない。
理由は、選挙区内に農林水産業に従事する人が少ない、つまり票が少ないからだ。 しかし、吉川氏はTPP対策本部事務総長→農林水産大臣と、農林族としての地保を固めてきた。
その見返りは金となって返ってきていた。
JAグループと農林水産関係企業は実力をつけた吉川氏への依存を高め、見返りに献金額を増やしていった。 実際に私どもの選挙区でも、JAグループは地元の政治家である中川郁子氏を通さずに吉川氏へ陳情を繰り返しているので、中川氏は吉川氏を苦々しく思っていると聞いている。
今回の事件の発端は河井克行・案里夫妻による買収事件だった。
河井氏を支援していた鶏卵生産大手「アキタフーズ」を捜索した際に出てきた資料から、アキタフーズと農林水産族議員と農林水産省幹部との「ズブズブの関係」が取りざたされたのだ。 実際に広島県選出のある議員事務所は「うちもお世話になっておりますからね。 広島の自民党議員はアキタフーズにお世話になっている人が多いと思いますよ」と言うぐらい、アキタフーズは政界へのアプローチを怠っていなかった。
アキタフーズと政界との接点は亀井静香氏である。
河井氏も亀井静香氏からの紹介でアキタフーズとの関係を築き始めた。 そして菅総理も……
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