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【Vol.357】冷泉彰彦のプリンストン通信

冷泉彰彦のプリンストン通信
「英国におけるコロナ変異種発生、現時点での情報」  イングランド南東部で新型コロナウイルス感染症の症例が急増しています が、調査の結果、この地域における大部分の感染例については、「新型コロ ナウイルスの変異種」によると英国政府が発表、EU政府も同様の報告をし ています。  現時点で公開されている資料を数点掲げます。 1)EUの感染対策センター(ECDC)のレポート https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/threat- assessment-brief-rapid-increase-sars-cov-2-variant-united-kingdom 2)英国のメディカルジャーナル「BMJ」のレポート https://www.bmj.com/content/371/bmj.m4857 3)英国のCOGコンソーシアムの特設ページ https://www.cogconsortium.uk/wp-content/uploads/2020/12/ Report-1_COG-UK_19-December-2020_SARS-CoV-2-Mutations.pdf  こうしたレポートで報じられている内容を簡単に整理すると、以下の通り です。 ・この新しいウイルスの変異種は「VUI 202012/01」と命名されています。 これは、ウイルスの付着、融合、侵入に最も重要な役割を果たす「スパイク 蛋白(S蛋白)」に複数の変異がみられるのが特徴です。 ・この変異種は感染能力が高く、再生産数(R=一人が何人に感染させるか ?)を 0.4 以上増加させるため、最悪の場合には 70% 感染が増加する可 能性が指摘されています。 ・現時点では、この変異種に感染することで、より「患者が重症化するとい う情報はない」とされています。 ・現時点までにデンマーク、オランダ、オーストラリア、ベルギー、イタリ ア、オーストラリアでいくつかの症例が報告されています。尚、多くの国が 英国との交通を遮断しています。 ・ウイルスの変異については、多少の変異であれば既存のワクチンによる 「接続の阻害効果」がなくなるわけではないが、何度も変異を繰り返すと必 要な抗体が変形するので対応が必要。但し、現在の技術ではワクチン仕様の 微調整で対応可能ということです。 ・この変異の原因ですが、ワクチン実用化の以前に発生しているので、ワク チンによる囲い込みの結果ではなく、また動物由来の可能性も少ないようで す。現時点では、ヒトへの感染の中で、例えば病気が長引いている患者の人 体中で変異した可能性が疑われているとのことです。  現地21日のNY株式市場は、このニュースを嫌気して売り優先で進みま したが、例えばバイデン次期大統領がワクチンを「公開接種」するなど、ワ クチン戦略を加速させれば、この変異に対応は可能という楽観論もあり、引 けにかけては鎮静化しています。  いずれにしても、このニュースに関しては警戒が必要です。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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