言いすぎか!!　弁護士 北村晴男　本音を語る Vol.１０８

━＝━＝━＝━＝━＝━＝━＝━＝ 言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る ━＝━＝━＝━＝━＝━＝━＝━＝ Vol.１０８ ２０２０．１２．３０ ■□■…………………………………… 目次 ……………………………………■□■ 　【１】　『「Go To トラベル」の全国一斉停止で 　 　　　　　　感染拡大は抑え込めるのか』 　【２】　『北村晴男の"素"』 　【３】　『番組出演予定 　　　　　　イベント情報』 …………………………………………… 　【１】　『「Go To トラベル」の全国一斉停止で 　 　　　　　　感染拡大は抑え込めるのか』 …………………………………………… 菅義偉内閣の支持率が、政権発足時の56%から39%に急落（朝日新聞社が12月19、20日に実施した世論調査）。その理由の一つに、12月14日の会見で「Go Toトラベル」の全国一斉停止を発表したその夜に「高級ステーキ店での8人の忘年会」に参加したことが挙げられる。 政府が国民に「5人以上での飲食では感染リスクが高まる」と自粛を呼びかけているにもかかわらず、率先垂範すべき首相が「5人以上の会食に参加した」と、国内メディアだけでなく、欧米メディアも批判的に報じた。 確かに、その日の会食は首相として参加しなければならない緊急課題があったとは思われない。だが、激務の中で幹事長に呼び出されたときに、出席者が誰で、人数は何人でなど、首相がいちいち聞くだろうか。セットされた会食に参加するのに、そんな細かなことに神経を使ってはいられないというのが本音ではないだろうか。 そもそも、飲食の場では飛沫（ひまつ）を避けるために隣席と一定の距離を保ち、大声を出さないなどの対策を取ることが先ず重要だ。お酒が入り大声で会話すると会食のリスクは人数次第で格段に大きくなる。それをわかりやすく国民に伝えようと「5人以上の飲食は自粛して」と述べたもの。「トータルでリスクを判断して」と言ったのではメッセージが伝わりにくいことから「5人以上」と目安を述べたのだろう。 4人でもお酒を飲みながら大声で、肩寄せあってワァワァやるのはリスクが大きいし、7人や8人でも換気の良い個室で一定の距離を保ち、しかも小声で話すのみであれば、リスクは高くない。 　： 　： 私が直接、都内のホテル関係者から聞いた話だが、都内の高級ホテルの年末年始は、例年、地方のお客様からの予約で満室になる。今年も「Go Toトラベル」があったので早めに満室になった。ところが、12月28日から2021年1月11日まで「Go Toトラベル」の全国一斉停止が発表されると、1日で予約の半分が取り消しになった。 その後もジリジリとキャンセルが増えており、おそらく全体の8割から9割はキャンセルになるだろうと予想しているという。 このように、「Go Toトラベル一時停止」とした瞬間に、国民は動いた。 政府は「Go Toトラベルで人が大量に移動すると感染が広がる」と考えたから「Go Toトラベル」を一時停止したわけで、少なくとも「人が大移動するのを防ぐ」という意味では、瞬間的にその政策効果は上がっている。 だが、「Go Toトラベル」の一時停止が感染予防、あるいは感染の低下に役立つかどうかといえば、それはわからない。なぜなら、そもそも「Go Toトラベル」が感染を拡大させた本当の犯人かどうかがわからないからだ。 少なくとも、要請とか要望とか、あるいは「Go Toトラベル」の一時停止とか、要請の的（まと）が外れていなければ、ほとんどの場合、国民は動く。 　： 　： これは、「外出するときにマスクをしてください」と同じこと。マスクをする習慣のない欧米では、「外出時にはマスクをして」と要請してもほとんどの人がしなかった。だが日本人は、元来マスクをする習慣があり、「外出するときには必ずマスクをして」と言われると、みんなマスクをする。 「マスク会食」は、実はそれとまったく同じこと。喋ったときだけ飛沫が飛ぶわけで、もちろん理に適（かな）っている。 ここでも「強制してくれればわかりやすいのに」という声がある。 わかりやすいのはそのとおり。だが、はたしてそれで本当にいいのか。強制は本当に必要なのか、疑問だ。 これが致死率（感染者数を分母とする死亡者の割合）70％の感染症だったとすると、間違いなく3日で法律をつくってロックダウンだ。そうしなかったら、国民の半数以上の命が失われるのだから。 だが、日本における致死率1.47％（厚生労働省発表12月25日現在）の今回の感染症では、強制は本来まったく必要ないと私は思っている。